12 チューニングのためにコンサートマスターの水谷晃が現れると大きな拍手が起こった。感染対策で聴衆は「半分」なのに、客席いっぱいに飽和する、気持ちのこもった長い拍手。オケが起立して応える。ジーンときた。みんなこの日を待っていたのだ。6月26日、サントリーホールで再開した東京交響楽団の定期演奏会のひとコマ。 6月中旬から東京のコンサートホールが少しずつ動き始めた。 都内でいちはやく再開に踏み切ったのがHakuju Hall(300席)。6月11、12日に、医師の監修のもと「Hakuju New Style Live」として3公演を開催した。出演関係者に50席限定で販売してのクローズドの有料公演。同ホールはビル7階。エレベーターは乗員を減らし、スタッフが同乗してボタン操作をするなど接触感染にも配慮した。このスタイルの公演を、規模・販路を少しずつ拡大しながら続けていく予定だ。 報道陣や業界関係者を観客役に招き、リハーサルを兼ねて再開対策を披露したのがミューザ川崎シンフォニーホール(1,997席)。6月16日、100席限定で、「キープディスタンスコンサート試演会」を行なった。終演後には意見交換会も。6月28日、東響の川崎定期で約900人の一般聴衆を迎えてリスタートした。 公立の大規模ホールで最初に公演を再開したのは東京芸術劇場(1,999席)。6月18日、レギュラー企画の「ナイトタイム・パイプオルガンコンサート」を、入場100名に限定して開催した。◆コンサートホール編 サントリーホール(2,006席)は、記事冒頭のコンサートに先立ち、すでに東京フィル定期(6/24)とホール主催のオルガン・コンサート(6/25)で、聴衆を500人前後に限定して開催していた。このホールの再開はやはり象徴的だ。 6月28日、東京文化会館では、主催公演「テノールの響宴」を、小ホール(649席)から大ホール(2,303席)に移して開催。座席間隔を空けるために、背もたれにカバーをかけているのだが、じつはこれ、既製の不織布バッグに注意書きを印刷して逆さまにかぶせたもの。ナイス・アイディア! 感染防止対策については、業界団体「全国公立文化施設協会」の指針もあり、どのホールもおおむね共通だ。もはや常識となっている範囲の施策。マスクやフェイス・シールドを装着して待ち構えるスタッフに、正直とまどいはあるけれど、あらためて気が引き締まる効果もある。 会場前のちらし配布も徐々に。配布を手がける「コンサートサービス」によると、72時間とされるウイルス残存期間を踏まえ、3日前にはちらしのセットを終えて備えているそう。6月末時点で、都内3箇所のホールが、主催者の許諾を条件に配布を認めているとのこと。もちろん配布時はマスク・手袋着用だ。 残念ながら、当面さまざまな不自由を強いられるのはやむを得ない。しかし、わたしたち聴き手も感染対策に最大限の努力を怠らずにいたい。「協力」ではなく、自分と社会のため、コンサートのある日常のために。Hakuju Hall (6/11、12 Hakuju New Style Live) 提供:Hakuju Hallミューザ川崎シンフォニーホール (6/16 キープディスタンスコンサート試演会)文:宮本 明
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