1128日ミューザ川崎の各ホールで、休憩の入るフルサイズの公演を開催した。指揮は飯守泰次郎、演目はベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番(独奏:田部京子)、メンデルスゾーンの交響曲「スコットランド」他。筆者は川崎に足を運んだ。諸々の対策はこちらも万全。オケは10型で、やはり通常より間隔が広くとられていたが、ホールの良き響きと相まってサウンド的な不満は感じない。本番は巨匠・飯守らしい悠揚たる演奏で、田部も力のこもったソロを展開。特にドラマティックな「スコットランド」は聴き応え十分だった。ちなみに休憩中も密な状態は生じず、フルサイズ公演の充実度の高さを再確認する結果となった。 なお7月には多くの楽団が有観客での公演を再開する予定(7/1現在)。平時にはまだ遠いが、着実に前へ進んでいくことを願わずにはおれない。 休業の影響が大なるオーケストラ界も、6月に入ると公演再開へ向けて動き始めた。そこで在京組の主な動向を見ていこう。 まず6月9日に新日本フィルハーモニー交響楽団がすみだトリフォニーホールで試演を実施した。初めに指揮者と奏者がゴーグル、マスクを装着の上、ビニールの衝立を用い、距離をとって演奏。その後、医師のアドバイスを受けながら、厳重装備・重装備・中装備の3段階に分けて確認作業を行った。指揮は下野竜也と中田延亮で、演目はブラームスの交響曲第1番等。これはかなり本格的な状況下での検証となった。 次いで東京都交響楽団が11日と12日に試演を実施。ジャーナリスト等にも公開された。初日は弦楽合奏のみ。大野和士(両日共)の指揮で、ホルベルク組曲等を演奏した。奏者の間隔は2m、1.5m、1mの順に推移。徐々に響きが締まってくる。2日目は管楽器と歌手2名が参加。医師や専門家6名が立ち会い、管楽器陣と歌手の飛沫測定も行われた。その後、間隔や位置を変更しながら「ジュピター」交響曲等を演奏。最後に歌手がアリアを歌い、客席最前列での飛沫測定もなされた。結果は都響HPの詳細なレポートをご覧いただきたいが、オケに関するごく大まかな結論は、「プロが演奏する限り、通常の間隔に近いセッティングが可能」というもの。これは朗報だ。 そして在京オケの先陣を切って東京フィルハーモニー交響楽団が、21日オーチャード、22日東京オペラシティ、24日サントリーの各ホールで有観客の公演を再開した。本来はプレトニョフ指揮によるマニアックな内容の定期。それが、指揮は渡邊一正、演目は《セビリアの理髪師》序曲と交響曲「新世界より」に変更され、休憩のない約1時間の公演となった。初日に足を運んだが、入場者数の制限をはじめ、考え得る対策はすべて行われていたし、来場者に「入場推奨時間」を伝える「時差入場」も実施された。編成は2管・12型で総勢65名。奏者間の距離は通常より広く、管楽器周りにアクリル板等が設置されたものの、1階席から見る限り違和感は少ない。演奏自体は表情豊かにたっぷりと奏された好演。本公演は「“フル編成”の曲を有観客で演奏した」点において、極上の成果をあげたといえるだろう。 さらに今度は東京交響楽団が、26日サントリー、◆オーケストラ編東京フィルハーモニー交響楽団 (6/21 第938回 オーチャード定期) ©三浦興一文:柴田克彦新日本フィルハーモニー交響楽団 (6/9 試演会)東京都交響楽団 (6/11 試演会) 提供:東京都交響楽団 ©Rikimaru Hotta
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