76CDCDCDベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番・第24番・第32番/福間洸太朗ヴォイス・オブ・ホープ/カミーユ・トマ献呈/新納洋介合唱音楽の夕べ vol.7 新実徳英の合唱世界Ⅱ 二つの愛の物語/藤井宏樹&合唱団樹の会ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、同第24番「テレーゼ」、同第32番福間洸太朗(ピアノ)ラヴェル:カディッシュ/ファジル・サイ:チェロ協奏曲「ネヴァー・ギヴ・アップ」/ブルッフ:コル・ニドライ/ワーグナー:夢/J.ウィリアムズ:映画『シンドラーのリスト』テーマ/ドニゼッティ:人知れぬ涙/ベッリーニ:清らかな女神よカミーユ・トマ(チェロ) ステファヌ・ドゥネーヴ(指揮) ブリュッセル・フィルハーモニック 他クライスラー(ラフマニノフ編):愛の喜び、愛の悲しみ/ラフマニノフ:「10の前奏曲」よりⅠ~Ⅵ/シューマン(リスト編):献呈/ショパン:即興曲第1番~第4番「幻想即興曲」/グルック(ズガンバーティ編):メロディー新納洋介(ピアノ)新実徳英:合唱劇「二つの愛の物語」藤井宏樹(指揮)金沢青児 中村響(以上テノール)荻原美城 塙亜寿美(以上ソプラノ)浅井道子(ピアノ)加藤亜希子(クラリネット)ヨコミゾ ヒロユキ(チェロ)合唱団樹の会ナクソス・ジャパンNYCC-27312 ¥2500+税ユニバーサル クラシックスUCCG-40099 ¥2800+税コジマ録音ALCD-9209 ¥2800+税日本アコースティックレコーズNARC-2158 ¥2500+税福間洸太朗による初めてのオール・ベートーヴェン・アルバム。第17番「テンペスト」と第32番のピアノ・ソナタの間に、第24番「テレーゼ」を置くという形で、個性の異なる3曲が並んでいる。輪郭のくっきりとした音と絶妙なコントロールで奏される「テンペスト」は、胸のすくような演奏。続く「テレーゼ」の可憐な美しさも際立つ。第32番は、メリハリのあるしなやかな表現で音楽が立体的に聴こえ、最後のソナタの気高さ、つくりの見事さを教えてくれる。卓越したテクニックが、思い描く音楽の表現のため十二分に生かされ、選曲のおもしろさもクリアに伝わってくる。(高坂はる香)DGレーベル初の専属女性チェロ奏者によるアルバム第2弾は、人々に「希望の声」を届けたいというコンセプトで主に歌の名曲たちをチェロ編曲版で収録した意欲作。その核となるのはトルコ出身の鬼才ファジル・サイが2015年11月のパリ同時多発テロに触発されて書き下ろしたチェロ協奏曲「ネヴァー・ギヴ・アップ」(世界初録音)であるが、ラヴェルの〈カディッシュ〉やユダヤ教の旋律に基づくブルッフの〈コル・ニドライ〉とワーグナーの歌曲、そしてホロコーストを題材にした〈シンドラーのリストのテーマ〉を大胆にも1枚に併録したことが実に素晴らしい! (東端哲也)東京藝術大学を卒業後、パリで研鑽を積んだ新納は、作品の輪郭を確実に描き出す確かな技術と美しい音色をもつピアニストである。これまでにブラームスやシューベルトなど多彩なプログラムで2つのディスクをリリースしてきたが、今回彼が選んだのはラフマニノフとショパンを核とした内容である。高度な技術はもちろんだが、歌心に音色の多彩さ、そして即興的な音楽運びなど、演奏者に対し、深く、それでいて自由な音楽性を要求する作品ばかりだ。新納はそれらを自在にクリアしているが、特にラフマニノフでの重厚さと繊細さのバランス感覚が見事である。(長井進之介)『伊勢物語』の「梓弓」と「筒井筒」を音楽化=合唱劇化する、という新実徳英ならではの着眼点。これが結果として非常に濃密な情感を現出させることに成功している。2つの挿話にそれぞれ登場する男女(2組計4名)が主人公であるが、ある意味で要たる合唱は本作のために和合亮一が書き下ろした創作=男女間の「詩」であり、これはギリシャ劇における「コロス」的な役割でもありながらそれを超越して情念を自在に拡張する。これら主役と合唱の関係性に注目して聴かれたいが、沈鬱な「あずさ弓」、軽快さを伴いながらもいじましい哀切さが覆う「筒井づつ」。見事なものだ。演奏も万全。(藤原 聡)CD
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