72CDCDCDシューマン歌曲全集2「ミルテ」/クリスティアン・ゲルハーヘルブルックナー:交響曲第7番/西脇義訓&デア・リング東京オーケストラJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)/豊嶋泰嗣フィール・ザ・サンライト/高口かれんシューマン:歌曲集「ミルテの花」(全曲)クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)カミラ・ティリング(ソプラノ)ゲロルト・フーバー(ピアノ)ブルックナー:交響曲第7番(ハース版)西脇義訓(指揮)デア・リング東京オーケストラJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番~第3番/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番~第3番豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)ルードヴィッヒ・アルベルト:フィール・ザ・サンライト/アンナ・イグナトヴィチ:トッカータ/トマーシュ・ゴリンスキー:シェード/J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番/安倍圭子:プリズム・ラプソディー(ピアノ伴奏版)高口かれん(マリンバ)植川縁(アルトサクソフォン)堀家徳子(ピアノ)ソニーミュージックSICC-30560 ¥2600+税N&FNF-65809 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCL-00709(2枚組) ¥3500+税フォンテックFOCD20124 ¥2700+税ゲルハーヘルが開始したシューマン歌曲全集の第2弾が本作の「ミルテの花」全曲。個々に有名な曲はあれども全曲録音は希少かつ貴重。歌唱も今後これを凌ぐものが現れるのか? と断言したい誘惑にかられる。その歌はかつてのフィッシャー=ディースカウを凌ぐと思われるほどのあらゆるフレーズにまで神経の通ったニュアンスと明快なディクションを披露して圧巻。女声のティリングもその美しい旋律線と歌詞の意味をくまなく汲み取った歌を二つながらに聴かせてこれも見事。フーバーの名サポートも相まって、これを超えるものは容易に出まい。 (藤原 聡)指揮者にして名プロデューサーの西脇義訓と「デア・リング東京」は、一般的なオーケストラ配置を解体し直し、しかも演奏としての成果を挙げ続けてきた。その大きな結実としてのブルックナーは、とにかく優しく、しなやか。前代未聞の配置により通常埋もれがちな音が浮かびあがり(その逆も)、聴く側の作品像をも洗い直していく。奏者個々人の自発性に任せることで音に無二の温もりが宿る。その響きに浸るにつけ、矛盾せずに「自発性」を「引き出し、導く」という高次元も期待したくなる。また、図らずも「楽器配置の常識」が問い直される世情になり、西脇の取り組みは様々なヒントともなり得よう。(林 昌英)新日本フィル等のコンサートマスターを務めながらソロ活動も顕著なベテラン名手、初のバッハ無伴奏ソナタ&パルティータ全曲録音。愛器ストラディヴァリウス300歳の年(同時に曲の誕生からも約300年)に因んだ録音でもある。これは渾身のアルバムと言っていい。まず耳を奪うのは名器を鳴らし切った豊潤な音。そして1音の実在感とフレーズの流動感の共生に感嘆させられる。有名なソナタ第2番のアンダンテはその好例だし、「シャコンヌ」も然り。明晰な分析、豊麗な音色、雄弁な表現が融合した密度の濃い演奏が終始続く、傾聴すべきディスクの登場だ。 (柴田克彦)高口かれんは、国立音大からベルギー王立アントワープ音楽院に学び、国際的に活躍する気鋭のマリンビスト。初のソロ・アルバムには、共演する植川縁(アルトサクソフォン)と共同委嘱したゴリンスキー「シェード」をはじめ現代の4作品に、バッハの無伴奏ヴァイオリン作品の編曲を挟み込んだ。時に繊細に、時に大胆に。変幻自在なマレット遣いで具に掬い取られる、作品ごとの色彩の違い。また、バッハでは、重音の処理など、発音形態の違いから、ヴァイオリンでは不可能な表現法にもあえて踏み込み、新鮮な驚きを現出。誰も体験したことのない、響きの宇宙へ聴く者を誘う。(笹田和人)SACD
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