eぶらあぼ 2020.7月号
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34高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団オルガンとオーケストラの華麗な融合文:柴田克彦第336回 定期演奏会9/26(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 常任指揮者就任から5年を経た高関健のもとで、濃密かつ生気に充ちた快演を繰り広げている東京シティ・フィル。当コンビは筋が通ったプログラミングも魅力だ。9月の定期演奏会はまさにそう。ここには、バッハ、ジョンゲン、フランクという“オルガニスト”作曲家による“オルガン的”な作品が並んでいる。 まずはバッハ(エルガー編)「幻想曲とフーガ ハ短調」。原曲は高貴なオルガン曲だが、後期ロマン派色全開の編曲が実に面白い。多数の打楽器を駆使したサウンドはエルガーとは思えぬほど華麗でド派手。これは一聴の価値大だ。おつぎのジョンゲン「オルガンと管弦楽のための協奏的交響曲」は今回の目玉ともいえる1曲。フランクの息子世代にあたるベルギーの作曲家によって1926年に作られた本作は、全4楽章にわたって多彩な楽想が続き、ある奏者いわく「万華鏡のような音楽」が展開される。オルガンは終始弾きっぱなしで、ソリストであると同時にオケの一員でもある点が独特の妙味。性格上生演奏でこそ真価を味わえる作品だけに、この機会は見逃せない。独奏は“オルガン界の彗星”福本茉莉。5つを超える国際コンクールで優勝し、ドイツを拠点にヨーロッパで活躍しながら、多様な分野に挑戦している彼女のソロも大注目だ。そしてジョンゲンと同じベルギー出身の先輩フランクの名作「交響曲ニ短調」。オルガン風の重厚さと美麗な旋律を持ち、作曲者お得意の循環形式が光る本作では、高関一流の比類なき構築力が存分に発揮されるであろう。 ここは、東京オペラシティの特性にもピッタリのオルガン(的)サウンドを、大いに堪能したい。浜離宮ランチタイムコンサートvol.200 林 美智子メゾソプラノ・リサイタル日本と世界の名曲を味わう喜び溢れる瞬間文:宮本 明9/29(火)11:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/ 浜離宮朝日ホールのランチタイムコンサート。2004年1月に始まった人気企画がついに200回目を迎える。お昼の11時半からという出かけやすい時間帯に、リラックスした気分で一流演奏家の演奏を、しかもリーズナブルな入場料で気軽に楽しめる、うれしいコンサート・シリーズだ。 記念すべき節目の回に登場するのはメゾソプラノの林美智子(ピアノ:河原忠之)。自然な息づかいと豊かな表情の、いつも聴き手の心に直接響く歌を歌う人だ。加えてサービス精神満点のエンタテイナーだから、彼女のコンサートはいつも楽しい。 しかも今回のプログラムは、よく知られた歌の数々をこれでもかと並べたような魅惑の選曲。前半は日本歌曲の名曲づくし。山田耕筰、橋本國彦から、三善晃、武満徹、そして木下牧子、加藤昌則まで、美しい旋律と日本語が一体となって発するメッセージを、ぜひ身体全体で直に受け止めたい。そして世界の歌。〈歌の翼に〉〈母の教え給いし歌〉やサティ〈ジュ・トゥ・ヴ〉、マスカーニの〈アヴェ・マリア〉(カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲)、〈サムソンとデリラ〉……。とろけるような美しい歌の宝石箱! いま一番聴きたいのはまさに、心の蓄えとなるような、このような歌たちだ。ウイルスとの長い持久戦のなかで、彼女の歌は、さまざまな不安や心の傷を癒し、折れそうな気持ちを奮い立たせて前を向く勇気を与えてくれるにちがいない。そう考えるだけで、今から涙が出て、やばい。©Toru Hiraiwa福本茉莉 ©安井 進高関 健 ©大窪道治

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