eぶらあぼ 2020.7月号
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31トーマス・ダウスゴー(指揮) 東京都交響楽団ベートーヴェンとマエストロの母国が誇るシンフォニー文:飯尾洋一第909回 定期演奏会Cシリーズ10/4(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp デンマークの名指揮者、トーマス・ダウスゴーが5シーズンぶりに都響に帰ってくる。プログラムにはダウスゴーの十八番といえる曲目が並んだ。 メイン・プログラムは母国デンマークを代表する作曲家ニールセンの交響曲第4番「不滅」。やはりダウスゴーの指揮で聴きたいのはこの曲だろう。第一次世界大戦の戦禍に直面した作曲者が、“生の謳歌”として書きあげた大傑作だ。災禍を超克するというテーマは、期せずして今の時代にも合致している。悲劇的な曲想を経て、やがて輝かしいフィナーレへと至る力強いドラマが描かれる。終楽章における二群のティンパニの競演は迫力満点。 もうひとり選ばれたデンマークの作曲家がルーズ・ランゴー。近年、20世紀前半の交響曲作曲家として再評価が進むランゴーだが、今回演奏されるのは10代で書いた初期の交響詩「スフィンクス」。リヒャルト・シュトラウスばりの後期ロマン派風の手触りと、ラフマニノフの「死の島」を連想させるような暗いロマンティシズムが一体となった秀作だ。初演は1913年、ベルリン・フィルによる。ベルリンの聴衆は若き作曲家の才能にさぞ驚嘆したことだろう。 そして、「都響ベートーヴェン交響曲全曲シリーズ」の一環として演奏されるのが交響曲第4番。ダウスゴーはスウェーデン室内管弦楽団との録音で意欲的なベートーヴェン・シリーズを披露しているが、都響とのコンビでも小気味よいアンサンブルを楽しませてくれるはずだ。トーマス・ダウスゴー ©Thomas Grøndahl東京文化会館 リラックス・パフォーマンス 新機軸も登場、誰もが気軽にクラシック音楽を楽しめるコンサートが実現文:林 昌英7/24(金・祝)14:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp 様々な事情によりオーケストラコンサートになかなか行けない、という人たちに薦めたいコンサートが、東京文化会館の「リラックス・パフォーマンス」である。ナビゲーター付きのステージで、公演時間約60分(休憩無し)の初心者プログラムが用意され、通常の公演とは異なり、完全な静寂でなくても鑑賞を楽しめるという環境を設定。公演チラシの「クラシック音楽のコンサートが初めての方も、発達障害や自閉症などでホールでの音楽鑑賞に不安がある方も、あらゆる人が一緒に音楽を楽しめる工夫がいっぱい」という言葉通り、客席の照明を完全に暗くしない、上演中に客席外に出ることができる、ご家族・介助者のためのガイドを公演約3週間前にホームページに公開するなど、様々な配慮がなされているので、4歳以上のお子様から高齢者まで、安心して参加できる。さらに、聴覚に障害のある人のために、体感音響システム「ボディソニック」(約20席)や、抱っこスピーカー「ハグミー」(約40席)による、振動で音楽を感じられる鑑賞サポート席も設けられている。ナビゲートを務めるのは東京文化会館ワークショップ・リーダーの磯野恵美と野口綾子。 演奏面ももちろん万全。三ツ橋敬子の指揮による東京フィルハーモニー交響楽団に、テノールの村上敏明と、第一線の出演者がそろった。プロコフィエフのバレエ『ロミオとジュリエット』抜粋や、日本民謡の旋律あふれる外山雄三「管弦楽のためのラプソディー」など、オーケストラの楽しさが詰まった曲に、プッチーニ《トゥーランドット》の名アリア〈誰も寝てはならぬ〉など、盛りだくさんの名曲が並ぶ。村上敏明三ツ橋敬子 ©大杉隼平

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