eぶらあぼ 2020.7月号
27/117

24 YouTubeは誰でも動画を投稿できるため、素人が面白い動画を投稿して広告収入を得る“ユーチューバー”も現れました。現在では、世界のほとんどの著名クラシック団体が公式チャンネルを開設しています。 公開されている動画は様々です。制作費が下がったとはいえコストが掛かっているものを著名団体やアーティストが簡単に無料で、とはいきません。そのため著名団体ほど動画は短く、プレビューやインタビューが中心になっています。ところが一部の団体は楽曲すべて、時にはコンサートやオペラをまるまる公開していることもあります。 ヨーロッパのオーケストラはその傾向が強く、例えばNDRエルプフィル(旧北ドイツ放送響)はマーラーやブルックナーの交響曲をまるごと聴けます。3年前に竣工したばかりのエルプフィルハーモニーの美しいホールも観ることができます。往年のファンは、何とヴァントのブルックナー映像を観られることに驚くでしょう。ドイツの放送オケは狙い目です。 高品質な動画を公開しているのは著名団体とは限りません。ポーランドの映画テレビ・アカデミーは公式チャンネルが始まった頃からの動画公開で、今やチャンネル登録者は44万人と、ベルリン・フィルのYouTubeチャンネルの登録者数を上回るほどです。名称からは想像できませんが、オーケストラなどの演奏動画が数多くアップされています。ポーランド地元オケや学生オケなどですが演奏水準は高く、楽曲の一般検索でも頻繁に上位にきます。「スター・ウォーズ」では再生2,000万回とまるでポップス並み。ウィーン・フィルの「スター・ウォーズ」が海賊版でもその十分の一の再生回数ですから、演奏が良ければ認められるというネットらしい状況です。もちろんクラシック曲も人気で、ヴィヴァルディ「四季」は再生600万回近く、フォーレ「パヴァーヌ」が150万回超えです。 オペラはさすがに制作コストが高いので、著名団体は通常ハイライトや出演者のインタビューのみです。ところがアメリカはカンザス州のウィチタ・グランド・オペラは20本近いオペラ全篇を無料公開しています。しかもそのほとんどはハイビジョン映像で、演奏も決して劣るものではありません。それが再生回数にも表れていて、公式チャンネルではいずれもトップの水準です。 著名ではないが演奏水準の高い団体が自信を持ってその演奏を披露する、そのような状況が今のYouTubeです。皆さんも検索してみて、有名でないからと無視するのではなく、一度視聴してみてはいかがでしょうか。世界にはまだまだ多くの優れた団体があることを発見するでしょう。無料音楽配信といえば「YouTube」編集部おすすめ配信サイト★Hope@Home(ヴァイオリニストのダニエル・ホープがナビゲーターを務めるホームコンサート) https://www.arte.tv/de/videos/RC-019356/hope-home/★マリインスキー・オペラ The Mariinsky Opera https://mariinsky.tv/e★ウィグモア・ホール Wigmore Hall BBC Radio 3 Special Broadcasts https://wigmore-hall.org.uk/watch-listen/live-stream

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る