41紀尾井 明日への扉 第28回~第30回未来を担うホープたちの瑞々しい音楽性と高い技術を満喫する文:片桐卓也第28回 7/3(金) 第29回 12/15(火) 第30回 2021.3/17(水)各日19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 https://kioihall.jp 開館25周年を迎えた紀尾井ホールでは、オープン当初からその才能が光る若手アーティストを紹介する企画を行ってきた。2006年スタートの「紀尾井ニューアーティストシリーズ」を引き継ぎ続いている「紀尾井 明日への扉」がそれだ。2020年度も惹かれる人選になっている。 今年度は3回のステージ。第28回(7/3)にはギターの斎藤優貴が登場。5歳からギターを始め、国内で研鑽を積んだ後、フランツ・リスト・ワイマール音楽大学でリカルド・ガレンに師事している。メルボルン国際などで第1位を獲得した他、これまでに様々なコンクールで29もの賞を獲得。これは日本人ギタリストとしては最多受賞数となるそうだ。武満徹 「フォリオス」、藤倉大「スパークス」、レゴンティ「アリアと変奏第2番」など、多彩なギター曲に挑戦する。 つづいて第29回(12/15)に登場するのはパーカッションの樋渡希美。東京音楽大学卒業後、17年からはドイツに渡り、シュトゥットガルト音楽演劇大学で学ぶ。三木稔「マリンバ・スピリチュアル」、シェルシ「Ko-tha1」などの作品で、打楽器界のホープと呼ばれるその実力を披露。 第30回(2021.3/17)にはすでに読売日本交響楽団などと共演し、クオリティの高さで話題のヴァイオリニスト、小林壱成が出演。ショーソン「詩曲」、サン=サーンス「ヴァイオリン・ソナタ第1番」などの作品で、現在ヨーロッパで磨いているその音楽性を示す。 明日の音楽界を担う逸材たちの演奏に注目したい。小林壱成 ©Shigeto Imura下野竜也(指揮) 東京交響楽団《フィデリオ》のための序曲4連発ほか、頭文字“B”で攻めるプログラム文:林 昌英第680回 定期演奏会 5/30(土)18:00 サントリーホール第119回 新潟定期演奏会5/31(日)17:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphny.jp ユニークなプログラミングを得意とする指揮者、下野竜也が、5月末の東京交響楽団の定期演奏会でもその本領を発揮する。演奏会後半に、生誕250年のベートーヴェン唯一のオペラ《フィデリオ》にまつわる4つの序曲が一挙に演奏されるのである。本公演は作曲順とは違い、《フィデリオ》序曲で始まり、《レオノーレ》序曲第1番~第3番が番号順に演奏される。聴く機会の少ない魅力作「第1番」も嬉しいが、なんといっても同じ素材による兄弟作と言える「第2番」「第3番」を実演で続けて聴けるのが貴重。荒削りなエネルギーの爆発が爽快な「第2番」、そこから推敲を経て磨き抜かれた「第3番」と並ぶことで、作曲法の変遷も体感できる好企画だ。もちろん下野のこと、企画だけに終わらず、熱気あふれる演奏で4曲の個性を聴かせてくれるはず。 前半には充実著しい若き名手、南紫音との共演で、ベルクのヴァイオリン協奏曲を。十二音技法ながら情感豊か、バッハの引用も印象的な20世紀の傑作である。下野と南は以前シェーンベルクの協奏曲で熱演を披露しており、その弟子ベルクの名品ではより熟した好演を期待できる。 さらに、演奏会冒頭のボッケリーニ(ベリオ編)「マドリードの夜の帰営ラッパ」も注目。イタリア出身、18世紀スペインで活躍したボッケリーニの曲を、20世紀イタリアのベリオが編曲した楽しい一編。過去に範をとるのはベルクの協奏曲に繋がるし、実は《フィデリオ》の舞台はスペイン。下野の仕掛けは何を生み出すのか、興味は尽きない。樋渡希美斎藤優貴南 紫音 ©Shuichi Tsunoda下野竜也 ©Naoya Yamaguchi
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