39第16回イマジン七夕コンサート 名曲で巡る「120分世界一周」7/7(火)18:30 サントリーホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp横山 奏(指揮)音楽を心から楽しみ、謙虚に向き合う若きマエストロ取材・文:林 昌英Interview 2018年の第18回東京国際音楽コンクール〈指揮〉は、沖澤のどか、横山奏、熊倉優という、今後日本の指揮界を担っていくであろう、注目の俊英たちが上位3人に並んだ。このとき「聴衆賞」を受賞したのが第2位の横山奏。本選のエルガー「エニグマ変奏曲」での高い集中力と心のこもった演奏で、会場の聴衆の心をつかんだのである。 「幼いころから音楽に接していましたが、専門教育を受けたのは遅く、ピアノを習い始めたのは小学5年生、中学で吹奏楽部の打楽器、大学入学のときには音楽教師を目指していました。声楽専攻でしたが、3年生から指揮専攻に転科しました。卒業後は桐朋学園と東京藝大大学院で高関健先生に師事し、藝大ではイギリスの名指揮者ダグラス・ボストック先生にも師事しました。指揮者を目指したのは遅かったのですが、打楽器も声楽も、指揮者にとって役に立つスキルになっています」 そんな横山が、毎年七夕に行われる「イマジン七夕コンサート」の指揮を務める。横山は15年から2年間、東京シティ・フィルの研究員として現場の経験を積んでいる。本公演には同楽団が出演するため、横山にとっては嬉しい“恩返し”の場にもなる。 「主催公演のリハーサルと本番に立ち会う研究員を、楽団員のみなさんも信頼してくださり、本当にいい経験になりました。公演での共演は初めてということで、もちろん思い入れもあって楽しみですし、2年前より少しは成長した姿を見せられる機会になればいいなと。ただ、このコンサートは曲が多いので、実際には感傷に浸る余裕はないと思いますが(笑)」 たしかに、この七夕の公演はコンサートイマジンの看板企画で、すでに10曲以上が予定されている。共演は山田武彦(音楽監督/編曲/ピアノ)、伊藤晴(ソプラノ)、中鉢聡(テノール)、岡田将(ピアノ)で、テーマは『名曲で巡る「120分世界一周」』。 「山田武彦さんはメドレー曲の編曲に、『ラプソディ・イン・ブルー』のピアノも務め、本当にアイディア豊富で多才な方です。ソリストの皆さんとは初共演ですが、すばらしい方々ばかりで嬉しいですし、刺激を受けて自分の糧にもなります。演目はアメリカものにヨーロッパの多彩な名曲集です。オペラも大好きなのでアリアは本当に楽しみ。歌と共演できる喜びは大きく、今後も機会があれば積極的にやりたいです」 他者との共同作業を重視し、自身の指揮の理想を「終演後にお客さんが『今日はオーケストラがすごくよかった!』という感想になるのが一番いい。『そういえば指揮者は誰だっけ?』というくらいに(笑)」と語る横山。だが、謙虚に音楽を追求する彼の名は、自ずと“知れ渡っていく”ことになるだろう。ニコラス・ナモラーゼ ピアノリサイタル2020 クラシック再構築 op.2独自の視点から音楽史を俯瞰するプログラミング文:伊熊よし子 2018年のカナダ・ホーネンス国際ピアノコンクールの覇者、ジョージア出身でハンガリーで研鑽を積んだニコラス・ナモラーゼは、とてつもなく個性的で才能豊かなピアニストである。同コンクールは参加者に自主的なプログラム構成を課し、インタビューを録画するなど、これも他と異なる。ナモラーゼは1992年生まれ。ジョージアが生んだ偉大なピアニスト、エリソ・ヴィルサラーゼらに師事し、作曲家としても活躍。コンサートではバロックから現代作品までユニークな選曲を披露する。 6/6(土)14:00 トッパンホール問 アイエムシーミュージック03-6907-2535https://management.imc-music.net©Nathan Elson 今回はJ.S.バッハとスクリャービンを主軸に、その間にそれぞれから影響を受けた作曲家の作品と自作を組み入れて聴き手の想像力を喚起し、偉才ぶりを発揮する。ジョージア出身のピアニストの演奏には、全編に祖国の特徴である歌心がちりばめられている。ナモラーゼも超絶技巧をごく自然に聴かせ、21世紀の新たなピアニストの出現を示唆するが、その奥には「心の歌」が存在する。その真意を聴き取りたい。
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