38東京文化会館《響の森》Vol.46チャイコフスキー生誕180年 コバケン80th アニバーサリー100歳違いの巨匠2人の時空を超えた熱き邂逅文:山田治生7/14(火)19:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp 今年80歳を迎えた小林研一郎が、自らが音楽監督を務める東京文化会館主催のシリーズ《響の森》で、東京都交響楽団を相手にオール・チャイコフスキー・プログラムを振る。チャイコフスキーが生まれたのが1840年であるから、小林とチャイコフスキーとはちょうど100歳違い。小林がチャイコフスキーを得意としているのには、何か運命的なものが感じられる。なかでも交響曲第5番は、小林の最も演奏頻度の高い交響曲の一つであり、十八番中の十八番である。“運命の動機”を中心とした作品のドラマティックな展開や美しい旋律の第2楽章などの歌謡性がマエストロの音楽性にぴったりとマッチする。小林が1978年から5年間にわたり正指揮者を務めるなど、長きにわたって信頼関係を築いてきた都響の演奏にも注目だ。 前半のヴァイオリン協奏曲で独奏を務めるのは、木嶋真優。ザハール・ブロンに師事し、今は亡きムスティスラフ・ロストロポーヴィチと共演を重ねるなど、ロシア系の音楽家から多大な薫陶を受けている彼女にとって、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は最も得意とするレパートリーの一つである。2016年第1回上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝するなど、ますます進化を続ける木嶋の演奏が楽しみだ。 小林の生誕80年とチャイコフスキーの生誕180年を名曲中の名曲で祝うコンサート。マエストロ・コバケンと木嶋とが情熱的な演奏を繰り広げるに違いない。アレクサンダー・クリッヒェル ピアノ・リサイタル頭脳明晰なピアニストが描くベートーヴェンの名作文:飯田有抄5/28(木)14:00 宗次ホール(052-265-1718)5/30(土)14:00 横浜市栄区民文化センター リリス(045-896-2000)6/1(月)19:00 武蔵野市民文化会館(小)(完売)http://www.pacific-concert.co.jp ドイツはハンブルク生まれの俊英アレクサンダー・クリッヒェルは各国で引く手数多のピアニストである。数学、生物学、語学でも秀でた能力を発揮する理知的なクリッヒェルは、何よりも音楽に対する情熱が深く熱い。その優れたテクニックは彼の理知的かつ詩情溢れる表現を思いのままに伝え、ソロ・リサイタルはもちろん室内楽の分野、そしてオーケストラとの共演を積み重ねてきた。 ソニー・クラシカルからリリースしているロマン派の作品群は、クリッヒェル自身の文学的センスを感じさせる選曲が並ぶ。昨年発表したアルバムには、ベートーヴェンの連作歌曲集をリストがピアノ独奏用に編曲した「遥かなる恋人に寄す」を収め、爽やかさの中にもベートーヴェンらしい深いカンタービレを聴かせた。 そんなクリッヒェルが今年の来日リサイタルで披露するのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「テンペスト」「月光」「告別」「熱情」である。作曲家の生誕250年に合わせて掲げたこのプログラムには、クリッヒェルのひとかたならぬ思いが込められていることだろう。これら4つのソナタは、それぞれ通り名があることで広く知られているばかりでなく、当時日進月歩で変化を遂げていたピアノという楽器にベートーヴェンが見出した可能性を追求することで書かれたソナタである。ドイツロマン派の先駆的な音楽性を持ったこれらのソナタの輪郭をクリッヒェルがどのように浮かび上がらせるのか、期待が高まる。©Henning Ross木嶋真優 ©TANKA.小林研一郎 ©K.Miura
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