eぶらあぼ 2020.5月号
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34山田和樹 ©平舘 平山田和樹 × 東京混声合唱団 アンセムコンサート世界各国の旋律に“来年”への思いをのせて文:藤原 聡6/7(日)14:00 文京シビックホール問 シビックチケット03-5803-1111 https://www.b-academy.jp 東京オリンピック・パラリンピックに向けて世界の国歌、あるいは「第2の国歌」のような位置付けで多くの人々に親しまれている愛唱歌をコンサートやCDを通じて広く発信する──自身のこうしたコンセプトのもとに行われているのが「山田和樹アンセム・プロジェクト Road to 2020」。山田はすでに2017年にその第1弾となる2枚組CDをリリース、日本フィルと東京混声合唱団を指揮してのその録音には、〈君が代〉や〈ラ・マルセイエーズ〉、〈星条旗〉といった最も有名な国歌からエルガーの「威風堂々」、チャイコフスキーの序曲「1812年」などの“第2の国歌”あるいは国歌の旋律が用いられている、といった楽曲までも含まれ、ありきたりの国歌集とは一線を画している。そしてこの6月に約3年ぶりに発売される第2弾がまた凄く、なんとCD7枚組(+1DVD)に世界206曲の国歌(国旗歌と賛歌も含む)を原語歌唱で収録。そして同じ月の7日には、山田が第2弾CDでも全面的に参加している東京混声合唱団を指揮するコンサートが文京シビックホールで開催される。 「文京区にゆかりのある都市・国の国歌をまじえて」と銘打たれドイツ、トルコや珍しいコモロ連合などの国歌が披露される第1部、そして「音楽とともに夢の旅へ」と題され〈さくらさくら〉や〈翼をください〉など愛唱歌が歌われる第2部。なお、本稿執筆直前にオリンピックの延期が発表されたが、コンサートは今のところ実施を予定している。ステージを満喫しつつ、来たるべき「祝祭」が無事開催されることを祈ろう。東京混声合唱団 ©Kyoichi Komazaki秋山和慶(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団時代を映し出す豊穣なオーケストラ・サウンドに浸る文:林 昌英第334回 定期演奏会 5/1(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 5月初日、名匠・秋山和慶が東京シティ・フィルの定期演奏会に登壇し、近代フランスとロシアの名作を聴かせる。秋山は日本中のオーケストラに客演を重ね、明晰なバトンテクニックでどの楽団からも上質な音響を引き出し、ますます円熟味を加えた名演を披露し続けている。今回取り上げる4作品はすべて20世紀初頭の作で、近代作品は秋山の最も得意とするところ。やはり近年の充実がすばらしい東京シティ・フィルとの組み合わせということで、さらに期待が膨らむ。 前半は近代フランスの2大作曲家の作品から、ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」と、ドビュッシーの交響詩「海」を。前者は繊細な音色と優しい情感、後者は鮮烈な色彩と雄大な描写力、いずれも管弦楽の粋を集めた名曲である。秋山の指揮で聴けるのは嬉しい機会で、これらの曲に期待するものを余すところなく体験できるだろう。 後半はロシア2作品で、まずグラズノフのヴァイオリン協奏曲を。グラズノフ一流の名旋律で、濃密な情緒と快活な名技を堪能できる作品で、これを山根一仁のソロで聴けるのがとにかく楽しみ。中学3年での日本音楽コンクール優勝以来、最注目の存在として走り続ける俊英ヴァイオリニストだ。ロシアものに思い入れの深い山根の熱演を期待したい。そして最後はストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」1919年版。オーケストラの表現領域を最大限に拡大した傑作で、最後の盛り上がりは感動的。秋山と東京シティ・フィルが聴かせる絢爛なサウンドに浸れる一夜となる。山根一仁 ©K.MIURA秋山和慶

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