33アレッシオ・アレグリーニ(ホルン)テクニックと歌心を持ち合わせた達人の音色に酔う文:江藤光紀5/26(火)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com イタリア人ホルニスト、アレッシオ・アレグリーニは知る人ぞ知るヴェテランだ。プラハの春国際(1997年、優勝)、ミュンヘン国際(99年、最高位)の各コンクールで世界にその名を轟かした当時、すでにスカラ座管の首席の座にあり、その後はベルリン・フィルの首席客演奏者も務めている。アバドの信頼も厚く、ルツェルン祝祭管など彼の率いるオケでは幾度となく大役を任された。一流指揮者がラブコールを送るのは、ずば抜けた技術に加えオケの要となるホルン・パートを的確にまとめる力量ゆえだろう。近年、指揮で成果を収めているのもうなずける。 そんな名手が日本初のリサイタルを開く。プログラムも多彩だ。素朴で生き生きとしたケルビーニのソナタ第2番。ミュンヘンの宮廷歌劇場のホルニストを父に持つR.シュトラウスのホルン協奏曲第1番は、10代後半とは思えぬ早熟ぶりを発揮した名作だ。ロッシーニらしいウィットとユーモアの効いた「前奏曲、主題と変奏」を経て、モーツァルトの「ピアノと木管のための五重奏曲 K.452」で結ぶ。 ピアノは村田千佳。トッパンホールではおなじみで、これまでに多くの名奏者を支えてきた。モーツァルトに登場する青山聖樹(オーボエ、N響)、金子平(クラリネット、読響)、水谷上総(ファゴット、N響)はいずれも日本を代表する実力者だ。 軽々とした音の跳躍、流れるレガート、確かな技量を通じてあふれ出る遊び心と歌心、そしてアンサンブルをまとめ上げる総合力。日本では未だ知られざる名手が、その魅力を余すところなく開陳する。アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団端正な造形と豊かな情熱を持って古典派シンフォニーの最高峰に挑む文:飯尾洋一第906回 定期演奏会Cシリーズ 7/30(木)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第907回 定期演奏会Bシリーズ 7/31(金)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 7月、東京都交響楽団に首席客演指揮者アラン・ギルバートが帰ってくる。毎回の共演で意欲的なプログラムを組んで、互いの相性のよさを感じさせるギルバートと都響だが、今回のプログラムはモーツァルトの「三大交響曲」。交響曲第39番、第40番、第41番「ジュピター」というモーツァルトの創作史における頂点をなす決定的な名作に取り組む。 ギルバートはこれまでにもモーツァルトやハイドンといったウィーン古典派のプログラムを都響と共演している。昨年7月の定期ではモーツァルトの交響曲第38番「プラハ」を指揮して好評を博した。また、昨年12月にはハイドンの交響曲第90番で、思わず笑みがこぼれるような楽しい演奏を聴かせてくれたのも記憶に新しいところ。こういった小編成のレパートリーを指揮するときのギルバートはことのほか生き生きとしているように見える。緊密なアンサンブルを実現するために、しっかりとオーケストラを統率しているのはたしかだろうが、あたかも一プレイヤーとして楽員たちとともに室内楽を楽しんでいるかのような趣も漂う。 ギルバートと都響のコンビからは明快さ、明瞭さを感じる。みずみずしく歯切れのよい表現で作品の隅々にまで光を当てる。加えて、音楽の随所に生命力が息づいている。端正な造形と豊かな情熱が絶妙のバランスで共存するモーツァルトを披露してくれるのではないだろうか。アラン・ギルバート ©Peter Hundert©Priska Ketterer
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