eぶらあぼ 2020.5月号
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32ボルドー国際弦楽四重奏コンクール2019優勝記念ツアー マルメン弦楽四重奏団6/28(日)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.netゴウ理紀也(ヴァイオリン/マルメン弦楽四重奏団)2つの国際コンクールを制した才気あふれるクァルテット取材・文:林 昌英Interview 2019年6月にフランスのボルドー、9月にカナダのバンフと、トップクラスの国際弦楽四重奏コンクールで連続優勝を果たし、いま最も勢いのある若手団体の筆頭格と言えるのが、イギリスを拠点とするマルメン弦楽四重奏団である。今夏にはボルドーの「優勝記念ツアー」として初来日し、彼らならではのライヴ感あふれる鮮烈な演奏を聴かせてくれる。 第2ヴァイオリンを担当するゴウ理紀也は、母親の故郷鹿児島で育ち、10代からは父親の故郷イギリスのメニューイン音楽学校、英国王立音楽大学卒業という俊才。穏やかで真摯な語り口ながら、「僕は完全に鹿児島の人間です。東京は都会すぎて」と笑顔を見せる。 「早いうちからアンサンブル志向で、留学時にも室内楽に関心がありました。幸いイギリスでは学生でも室内楽公演ができる仕組みがあり、積極的に経験を積むことができました」 「マルメン」は王立音楽大学で出会ったメンバーで結成、「4人が違う出身地や文化で育って、個性や考え方の違いがあるのが面白さにつながっている」という。彼らの名を広く知らしめたボルドー国際コンクールの選考方法は特殊で、あらかじめ事務局が若手6団体を選び、なんと3回ずつのフルコンサートを行い、それらすべてが審査対象となる。 「イギリスで演奏経験を重ねながら、お客さんと一緒に演奏を作るという感覚ができていましたので、コンサートとして楽しんでいただく選考方法は強みと思っていました。それまでの積み重ねが間違っていなかった成果と思い、優勝は本当に嬉しかったです」 彼らが第一生命ホールで披露するのは、ハイドン第44番(op.50-1)、リゲティ第1番「夜の変容」、メンデルスゾーン第6番。ボルドーの初日と同じプログラムで、優勝の熱気の一端を体感できる。 「僕たちはシェフがメニューを作るような感覚で、コンビネーションを考えてプログラムを組みます。今回の3曲でいえば、西洋音楽での弦楽四重奏曲はハイドンから始まって、その発展はリゲティで一旦終わりを迎えたようにも考えられます。メンデルスゾーンはロマン派の王道といえるすばらしい曲。古典、現代、ロマンと楽しんでいただければ」 ツアーについて「日本はヨーロッパに比べると室内楽公演が少ないようで、その面白さをもっと多くの人々に知ってもらいたい」と意気込むゴウ。笑顔の絶えない彼が、クァルテットをやる楽しさと厳しさについてはこう語ってくれた。 「各人の表現力を高めるため、練習ではお互いプレッシャーをかける面もあります。それでもコンサートでお客さんが喜んでくれたときの嬉しさは比類がありません。ただ、クァルテットにあこがれている人には、“夢のままにしておいた方がいいよ”と言っています(笑)」東京オペラシティ Bビートゥーシー→C 勝山大舗(クラリネット)クラリネットで拓く時空を超えたプログラム文:飯尾洋一 東京オペラシティの名物企画「B→C バッハからコンテンポラリーへ」、その第222回に登場するのは都響のクラリネット奏者、勝山大舗。 プログラムは多彩だ。前半のコンセプトは「対話」。バッハの時代にクラリネットはまだない。そこで選ばれたのが無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調。無伴奏ながらも多声的な書法から対話性が生まれる。現代フランスの作曲家パトリック・ブルガンの「バヴァルダージュ」は、「おしゃべり」の意を題に持つ。こちらも一本のクラ5/19(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター  03-5353-9999https://www.operacity.jpリネットが対話性を表現する。ブラームスのクラリネット・ソナタ第1番ではピアノの鈴木慎崇と音の対話がくりひろげられる。 後半は「ジャポニズム」がコンセプト。林光の「明日ひとつの歌が…」、ロジェ・ブートリーが奈良滞在時の印象をもとに書いた「飛鳥」、薮田翔一への委嘱新作世界初演、ドビュッシーの「第一狂詩曲」が披露される。ドビュッシーは勝山にとって「生涯をかけて向き合う作曲家」だという。全編が聴きどころとも言ってもよい意欲的なプログラムだ。左より:ステファン・モリス、ブライオニー・ギブソン=コーニッシュ、ヨハネス・マルメン、ゴウ理紀也 ©Marco Borggreve

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