eぶらあぼ 2020.5月号
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114CDCDCDアンナー・ビルスマ in 東京/アンナー・ビルスマ&渡邊順生ショパン&リスト/山中明日菜鏡の中の鏡/齋藤真知亜和の歌 日本の歌によるピアノ作品集/飯野明日香ボッケリーニ:チェロと通奏低音のためのソナタ イ長調/メンデルスゾーン:協奏的変奏曲 ニ長調、チェロとピアノのための無言歌 ニ長調/ベートーヴェン:チェロとピアノのためのソナタ第4番・第3番アンナー・ビルスマ(チェロ)渡邊順生(フォルテピアノ)ショパン:ピアノ・ソナタ第3番、ノクターン第8番、スケルツォ第2番/リスト:愛の夢 第3番、スペイン狂詩曲山中明日菜(ピアノ)ペルト:鏡の中の鏡/クヴァンツ:ソナタ第5番/オッフェンバック(鷹羽弘晃編):メドレー〈ホフマン物語~天国と地獄〉/ピアソラ:タンゴの歴史、デカリシモ(鷹羽編)齋藤真知亜(ヴァイオリン)鷹羽弘晃(ピアノ)平川加恵:ずいずいFantasy/川島素晴:白河踊りメタモルフォーゼ/小出稚子:うさぎのダンス/篠田昌伸:ゲートキーパー/挾間美帆:コラール̶「からたちの花」メロディーによる/金子仁美:日本の唱歌「雪」による変奏曲̶3Dモデルによる音楽Ⅳ/法倉雅紀:茜草指(あかねさす)第3番̶独奏ピアノのための 他飯野明日香(ピアノ)収録:1999年10月、日本福音ルーテル東京教会(ライヴ)コジマ録音ALCD-1196 ¥2500+税ナミ・レコードWWCC-7919 ¥2500+税収録:2019年6月、Hakuju Hall(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-4075 ¥3000+税カメラータ・トウキョウCMCD-28373 ¥2800+税昨年9月に世を去った、バロック・チェロの先駆者アンナー・ビルスマ。彼は1999年、日本での古楽普及に尽力し、前年に逝去した音楽評論家の佐々木節夫を偲ぶステージを、自らの発案で開いた。当盤は、この時の全演奏を収録。ビルスマにとって、唯一のライヴ録音盤でもある。冒頭に収録されたボッケリーニの第1音から、溢れ出る愉悦。そのまま、一気に最後の「無言歌」へと、自然に音楽が流れてゆく。楽器を背負って自転車をこぎ、近所の教会へ向かい、興の赴くままに弾く。そんな彼の日常が投影されたよう。共演の渡邊順生も、表現の伸縮をつぶさに受け止める名サポートだ。(寺西 肇)山中明日菜は東京音楽大学を卒業後、フランスをはじめヨーロッパで研鑽を積んだピアニスト。イタリアの音楽祭に招かれるなど国際的な演奏活動を展開。また、岡山を拠点に後進の指導にあたりながら、現在もガブリエル・タッキーノのもとで定期的に研鑽を積んでいる。当盤はこれまでの活動の集大成ともいえるもの。プログラムは山中のレパートリーでも重要なショパンとリストで、輪郭のはっきりとした彼女の音色は、旋律の美しさが際立つ作品を魅力的に響かせている。特にショパンのピアノ・ソナタ第3番では絶妙なテンポの緩急、和声変化の繊細な扱いを聴かせてくれる。(長井進之介)NHK交響楽団ヴァイオリニストの齋藤真知亜が、1999年から毎年開催してきたリサイタルが昨年20年目を迎えた。当盤はそのライヴ録音だが、当日アンコール曲だったペルトの「鏡の中の鏡」が先頭に配置されているのが効果的。鷹羽弘晃の優しく美しいピアノに乗り、どこまでも静謐で研ぎ澄まされた音だけが流れる世界。鏡のような水面が永遠に続くかのような時間は、不安の時代にこの上なく沁みる。「作品を利用して自分を押し出すのは大嫌い」と語る齋藤らしく、他の作曲家も純度の高い音色で弾きこみ、オッフェンバックの楽しさや歌心、ピアソラの情熱と憂愁も丁寧にすくい取る。(林 昌英)現代のフランスおよび日本のピアノ作品をメインに精力的に演奏し続ける飯野明日香。前作「Japan Now」では西村朗や藤倉大らの21世紀作品を中心に発表し話題となったが、4枚目のアルバム「和の歌 WANOKA―日本の歌によるピアノ作品集」は10名の作曲家(金子仁美・川上統、川島素晴、小出稚子、篠田昌伸、鈴木純明、法倉雅紀、挾間美帆、平川加恵・山田武彦)に飯野が委嘱した全新作で構成される。懐かしい唱歌や童歌の断片が聞こえたり、それぞれの個性が煌く異世界へと誘われる10作品。飯野の多彩な表現力、そして現代日本のピアノシーンを知る上でも必聴だ。(飯田有抄)CD

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