eぶらあぼ 2020.4月号
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94©仙台国際音楽コンクール事務局第7回仙台国際音楽コンクール最高位受賞記念 チェ・ヒョンロク ピアノリサイタル6/14(日)14:00 日立システムズホール仙台 コンサートホール問 仙台市市民文化事業団 総務課022-727-1875 http://www.bunka.city.sendai.jp6/18(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/チェ・ヒョンロク(ピアノ)瑞々しい感性で奏でるショパンとラヴェル 取材・文:高坂はる香Interview 2019年、第7回仙台国際音楽コンクール ピアノ部門で優勝した、韓国のチェ・ヒョンロク。野島稔審査委員長は、「信念を持ち、それを舞台で表現できるのは才能だと思う」と評した。 そんなチェが、6月にリサイタルを行う。プログラムはラヴェルとショパン。 「ラヴェルは大好きな作曲家。緻密に書かれた和声の魅力を求める作業が楽しいのです。中でも『クープランの墓』のメロディや和声にあるときから強く惹かれ、さらに古いフランス音楽へのオマージュであること、友人への追悼の意が込められていることを知り、ますます関心を持ちました」 2年ほど前から、ザルツブルク・モーツァルテウム大学でパヴェル・ギリロフのもと学んでいる。 「先生があるとき、この6つの小品は、まるで6つの味を持つ美味しいクッキーのようだとおっしゃり、僕は色とりどりのマカロンを思い浮かべ、イメージを膨らませました。留学して1年間は先生が何を求めているのか十分わかっていませんでしたが、2年目に入り、直感的に理解できるようになりました。すべての音を歌うようにとアドバイスされるうち、耳を集中させる方法も変わったと思います」 ショパンもまた、感性に合う大切なレパートリーだという。 「ピアノ・ソナタ第3番は、長く勉強しているとても好きな作品。感情がめまぐるしく変わるので、瞬間の変化を感じ続けなくてはいけません」 チェがピアノを始めたのは、5歳のとき。姉が通うピアノ教室について行くうち、簡単に楽譜を読んで弾いてしまう様子を見たピアノ教師から勧められたことがきっかけだった。 「子どもの頃から、ピアノは多様な面を持つ大事な友だちのような感覚で弾き続けてきました。本格的に勉強するようになったのは中学3年生の時。韓国で学んでいた頃は、仲間と切磋琢磨しながら、一生懸命指の練習に励んでいました。でも、ザルツブルクに留学して、“練習をたくさんしない”という学び方があると知ったのです。例えばそのかわりに散歩をし、山や川のある風景を眺めることで、練習に戻ったときにプラスの効果があると気づきました」 現在26歳。仙台での優勝により活動の場が増えたという。 「この前はソヌ・イェゴンさん(2013年仙台国際音楽コンクール優勝者)が、自らプロデュースする韓国の演奏会に出演者として招いてくれました。彼はコンクールの配信、それも予選を聴いた時点で、僕を推薦してくれたそう。結果的に優勝の報告ができてよかったです。今後は、アイディアを持っておもしろいプログラムを届けられるピアニストを目指したいです」新しい耳 第26回 テッセラ音楽祭聴き手の感性を刺激するこだわりのプログラム文:伊藤制子 ピアニストの廻由美子が主催し、独自の視点による企画が注目を集めてきた「新しい耳」テッセラ音楽祭。第26回が5月15日から3日間にわたり開催される。 第1夜は、繊細な歌心で注目を集めるピアニストの梯剛之のリサイタル。バッハ「ゴルトベルク変奏曲」が、武満徹作品他とのカップリングで、どのように弾かれるか期待したい。第2夜は、ソプラノの工藤あかねと廻によるスリリングな演奏会。シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」(ヴォーカル&ピアノ版)では、演劇的な起伏に富んだ妖艶な歌唱を聴くことができよう。他に一柳慧の「花の送葬」なども歌われる予定。第35/15(金)~5/17(日) 三軒茶屋/サロン・テッセラ問 オーパス・ワン03-5577-2072 http://opus-one.jp夜には作曲家・ピアニストの寺嶋陸也が出演する。ベートーヴェンのソナタ第13番「幻想風ソナタ」、シューマンの「幻想曲」、シューベルトの「さすらい人幻想曲」というファンタジーをキーワードとする名曲に、ショスタコーヴィチ、八村義夫の作品の組み合わせで、斬新な寺嶋ワールドが開示されることだろう。左より:廻 由美子/梯 剛之 ©Masashige Ogata/工藤あかね/寺嶋陸也 ©渡辺 力

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