eぶらあぼ 2020.4月号
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92平日午後のアプリコ・プレミアムコンサート 大谷康子 ヴァイオリンリサイタル 名手が贈る、明るく優雅な春の午後文:笹田和人4/22(水)14:00 大田区民ホール・アプリコ問 アプリコ チケット専用電話03-3750-1555 https://www.ota-bunka.or.jp 1725年製の銘器ストラディヴァリウス「ウィルヘルミ」で紡ぐ、円熟の音色に心を浸したい。音楽への愛情に満ちた温かなプレイで、聴き手に感動と喜びを与え続けて、今年でデビュー45周年の節目を迎えた名ヴァイオリニスト、大谷康子。気鋭のピアニスト、佐藤卓史とともに大田区民ホール・アプリコへ登場し、とっておきの名曲の数々を披露する。 「“ヴァイオリン”という、大好きな宝物に出会えたのは、私の人生で一番の幸運」と言う大谷。東京藝大・同大学院に学び、在学中から演奏活動を始め、ウィーンやベルリンなど主要都市でリサイタルをする一方、モスクワ・フィルほか国内外の主要楽団と共演を重ねてきた。そして、今回共演する佐藤も、国際的に活躍する実力派だ。 ステージは2部構成。「春に寄せて」と題した第1部は、生誕250年を迎えたベートーヴェンのソナタ第5番「春」を軸に。ヴィヴァルディ「四季」やピアソラ「ブエノスアイレスの四季」から、それぞれの「春」ほか、色とりどりの名曲を披露。さらに〈一緒に歌おう!〉と題し、「春の小川」や「花」など聴衆の歌との“共演”も。 そして、第2部は、オリンピックの年にちなんで、「世界の音楽」をテーマに。「今年は、世界が日本に注目する年。スポーツと同じように、音楽で世界との親善を深めたい」と大谷。アジア(外山雄三「日本民謡による組曲」から第1楽章)を出発点に、南米(ピアソラ「リベルタンゴ」)など五大陸を巡って、ヨーロッパ(サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」)に至る、音の世界旅行へと聴衆をいざなう。©Masashige Ogata横坂 源 無伴奏チェロ・リサイタルチェリストとしての歩みを凝縮した節目のステージ文:飯尾洋一5/30(土)14:00 アクトシティ浜松(中)問 浜松市文化振興財団053-451-1114 https://www.hcf.or.jp 今年、演奏活動20周年を迎えたチェリスト、横坂源がアクトシティ浜松で無伴奏チェロ・リサイタルを開く。2010年ミュンヘン国際音楽コンクール・チェロ部門第2位、齋藤秀雄メモリアル基金賞、出光音楽賞など輝かしい受賞歴を誇る名手が、チェロのさまざまな可能性を切り開いた作品に挑む。 プログラムは多彩だ。チェリストにとっての聖典、バッハの無伴奏チェロ組曲の第2番と第6番の間に、ソッリマの「アローン」と「ラ・テンペスタ」、カサドの無伴奏チェロ組曲、スヴィリドフの新作世界初演、黛敏郎の「文楽」がはさまれるという構成。 “チェロの魔人”ジョヴァンニ・ソッリマは昨年の来日が記憶に新しいところだが、ソッリマの作曲家としての顔に接することができる。往年の名チェリスト、ガスパール・カサドもやはり作曲家として作品を残しており、無伴奏チェロ組曲は代表作のひとつ。スザンネ・ツァーガー・スヴィリドフは横坂が尊敬する南ドイツの作曲家で、この公演のために新作が委嘱された。黛敏郎の「文楽」では、チェロが太棹三味線や義太夫節の響きを再創造する。 実は横坂源は6年前より浜松に在住している。新潟出身の横坂にとって、浜松は晴天の続く常夏の街のように感じられるのだとか。すっかり気に入ったという浜松で迎える節目の年。音楽の街にふさわしく、喜びと刺激にあふれた公演になりそうだ。©Takashi Okamoto

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