eぶらあぼ 2020.4月号
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91問 リリア・チケットセンター048-254-9900 https://www.lilia.or.jp※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。川口総合文化センター・リリア 開館30周年記念事業からベジャールの傑作バレエも登場する内容満載のステージ取材・文:笹田和人 催しに合わせての多彩な可変機能を持つメインホールや、スイス・クーン社製のパイプオルガンを備え、豊潤な音響を誇る音楽ホールを擁し、川口市のみならず、埼玉県の芸術文化の向上にも貢献してきた川口総合文化センター・リリア。今年7月でグランド・オープンから30周年を迎えるにあたり、アニヴァーサリーを祝う多彩な記念のステージが用意されている。 メインホールで開かれる「埼玉ゆかりの名歌手たちによるバースデイ・ガラ・コンサート」には、ソプラノの小川里美、メゾソプラノの林美智子をはじめ、国際的なオペラの檜舞台で活躍する、埼玉県出身・在住の第一線のソリスト12人が集結。現田茂夫指揮の東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団をバックに、ヴェルディ《椿姫》《リゴレット》やプッチーニ《トスカ》などイタリア・オペラはもちろん、モーツァルトやビゼー、グノー、ドヴォルザークまで、各々が最も得意とする、そして傑作のエッセンスとも言うべき名アリアを歌い尽くす(7/4)。 先鋭的な振付を通じて、伝統にとらわれることなく、現代に生きる芸術としてバレエを“再創造”した、フランスの巨匠モーリス・ベジャール。彼が2007年に世を去った後も、その息吹を鮮烈に伝え続けるモーリス・ベジャール・バレエ団が『バレエ・フォー・ライフ』(1997年初演)を披露。〈ボヘミアン・ラプソディ〉など、伝説的ロック・バンド「クイーン」の17の名曲やモーツァルトの調べに乗せて、圧倒的な興奮と愉悦をもたらす衝撃作だ(5/31)。 そして、ステージには必ず、聴き手が楽しめる“仕掛け”を忍ばせるマエストロ、広上淳一が、読売日本交響楽団を率いて登場。音による極彩色の絵画のような、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」を軸に。我が国を代表する名手、小山実稚恵の独奏でラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」、さらにグリンカの歌劇《ルスランとリュドミラ》序曲と、濃密なロマンを湛えたロシア・プログラムを聴かせる(9/29)。 一方、音楽ホールには、ハンガリー出身の作曲とオルガンの巨匠、ジグモンド・サットマリーが降臨。いずれも世界的奏者として活躍する愛弟子の松居直美、今井奈緒子、井上圭子とともに、クーンの銘器を用い、バッハや自作を含めた佳品をガラ・コンサートとして披露する(5/26)。そして、フルートのエマニュエル・パユをはじめ、6人のスーパースターで構成される「レ・ヴァン・フランセ」も登場。プーランク「六重奏曲」や生誕250年のベートーヴェンの作品ほか選りすぐりの傑作と、変幻自在のプレイで魅せる(7/3)。左より:小川里美 ©Kei Uesugi/林 美智子 ©Toru Hiraiwa/『バレエ・フォー・ライフ』ステージより ©BBL - Gregory Batardon/広上淳一/小山実稚恵 ©ND CHOW/ジグモンド・サットマリー/レ・ヴァン・フランセ ©wildundleise.de Georg Thumレイ・チェン ヴァイオリン・リサイタル2020今もっとも勢いに満ちたヴァイオリニストが奏でる至福のプログラム文:伊熊よし子 レイ・チェンの演奏を聴いたあとは、心がほんわかと温かくなる。彼のヴァイオリンは自身の声のようで、雄弁な語りとなり、歌となり、聴き手に向かって訴えかけてくるからだ。 「僕はひとつの作品と対峙するとき、膨大な時間をかけます。モーツァルトの協奏曲のカデンツァを仕上げるためには50時間くらいかけます」 こう語るチェンはまさに努力の人である。しかし、生まれ出る音は自然で清涼で情感豊かでのびやか。今回は大好きだというバッハ「シャコンヌ」、ラヴェル「ツィガーヌ」をはじめとする愛奏曲が4/27(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp©John Mac勢ぞろい。チェンは多くの指揮者に惚れ込まれ、共演のオファーが絶えないヴァイオリニストだが、それは彼の音楽に対する真摯な姿勢、豊かな才能、そして何より人に好かれる性格が偉大なマエストロたちを惹きつけるからに違いない。ピアニストもチェンと組むと、「喜びの音楽が生まれる」と高く評価する。 いま勢いに満ち、もっとも脂の乗ったヴァイオリニストの意欲的な演奏を胸に刻みたい。

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