eぶらあぼ 2020.4月号
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88太田糸音 ピアノ・リサイタル 5/21(木)19:00 Hakuju Hall問 オフィス諷雅 support@officefuga.jp https://www.officefuga.jp太田糸音(ピアノ)溢れんばかりの演奏意欲とチャレンジ精神旺盛な逸材登場取材・文:伊熊よし子Interview 最近、個性的な若手ピアニストの台頭が目立つが、太田糸音もそのひとり。両親ともに音楽家という家庭に育ち、3歳から音楽教室で学び、作曲家になりたいという夢を抱くようになる。やがてひとりでオーケストラのような響きが出せるピアノに魅了される。 「子どものころから楽譜の書き方に興味があり、総譜など全体を見ることが好きでした。中学生のときにフーガの勉強を行い、バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻の中から第1曲を写譜し、作品の書き方を研究し分析しました」 太田は2000年2月20日生まれ。20歳になったばかりだ。しかし、東京音楽大学付属高等学校を2年次で早期修了し、飛び級で東京音楽大学に入学。ここも今春3年次での早期卒業が決定し、いまは留学を視野に入れて新たな道を模索中だ。そんな彼女が「自分の弾きたいものを全開に」と語るリサイタルを行う。プログラムはそれぞれ思い入れのある作品を選んでいる。 「メンデルスゾーンはバッハのイメージと重なります。幻想曲を弾きたいと考え、シンプルな美しさを備えた『スコットランドソナタ』を選びました。私が親元を離れて上京し、初めて取り組んだ作品です。アルベニスの『タンゴ』は舞曲好きの私が大好きな作品で、ゴドフスキーの編曲により複雑で華やかさが増しています。リストの『《ノルマ》の回想』も弾きますが、リストは心の底から愛する作曲家。ベッリーニの歌劇《ノルマ》は初めて観たオペラで、とても深い感動を受けました。それをリストが編曲しているのがこのトランスクリプション。弾いていてゾクゾクし、幸せな気分になります。ラヴェルの『ラ・ヴァルス』も舞曲が好きな私のお気に入りの作品。今回、初めて挑戦します。華々しい美しさがありますね。ラヴェルでは『夜のガスパール』を弾いたことがありますが、その時代の詩を読みたいという気持ちが触発されます」 いま、追加する曲目も考えているというから、より充実したプログラムになりそうだ。 「レパートリーの中心を近・現代とバロックに置いていますが、邦人作品も積極的に弾いていきたい。また、いまとても強く惹かれているのがブラームスの中期以降の作品です。ピアノ曲のみならず、室内楽を演奏したいのです。私は弦楽器にも管楽器にも興味があり、チェロやヴィオラを自分でも弾いてみたいと思っています。歌曲も好きで、R.シュトラウスに魅了されています。ピアノパートを弾きながら、この和声はベートーヴェンの『告別』ソナタと似ている、などと分析して楽しんでいます」 まさに若き逸材。今後も目が離せない!小森邦彦 & ストラスブール パーカッション グループ 2020日仏の名手たちが新たなる表現領域を開拓する文:笹田和人 常に呼吸し、鼓動し続ける、生きた音楽を体感したい。半世紀以上にわたる先鋭的な演奏活動を通じ、打楽器の可能性を切り拓いてきた世界的打楽器アンサンブル「ストラスブール パーカッション グループ(PdS)」が、やはり国際的な活躍を続けるマリンビストの小森邦彦をソリストに迎え、20年ぶりの来日を果たす。 PdSは1962年、フランス北東部ストラスブールで結成。ブーレーズ、シュトックハウゼンら現代の大家たちが、350曲以上を提供、その初演を手掛けてきた。今回は、“第三世代”のトリオ編成による初5/14(木)19:00 長久手市文化の家 森のホール問 長久手市文化の家0561-61-2888 https://www.city.nagakute.lg.jp/bunka/bunka_ie/ongaku/の来日。一方の小森は、西洋クラシック音楽の伝統の先にマリンバを位置づける独創的なスタンスで、欧州やアジアを舞台に活躍を続ける。 今回のステージは、両者それぞれ単独での演奏と共演からなる三部構成。小森は自身が委嘱初演した細川俊夫「想起」ほかを。PdSも武満徹「雨の樹」や、当公演のための委嘱新作を披露。その後の共演は、坂田直樹への委嘱作「木の中の森」の左より:小森邦彦/ストラスブール パーカッション グループ ©Flora Duverger世界初演が軸に。第一線をひた走る名手たちが、音楽の“いま”を紡ぎ出す。

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