eぶらあぼ 2020.4月号
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86高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団充実顕著なコンビの壮大な新シーズン開幕文:柴田克彦第333回 定期演奏会 4/11(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 高関健の常任指揮者就任から丸5年、緻密さや表現の幅を着実に向上させながら好演を続けている東京シティ・フィル。新シーズンは、就任6年目に入る高関によるドイツ後期ロマン派の壮大な2曲で幕を開ける。 4月定期の前半は、ブラームスのピアノ協奏曲第2番。スケルツォを含む全4楽章という協奏曲としては異例の構成、ピアノと管弦楽を巧みに同化させた内容から“ピアノ付きの交響曲”とも称される円熟期の傑作にして、後半に置かれることも多い大作だ。ピアノ独奏はデジュー・ラーンキ。古いファンには懐かしい“ハンガリー三羽烏”の一人として名を馳せた彼は、近年また頻繁に来日し、円熟した姿を披露している。ブラームスの2番は熟達したベテランでこそ味が出る作品だけにその至芸が楽しみだし、顕著に厚みを増した東京シティ・フィルの壮麗な演奏にも期待がかかる。 後半は、R.シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」。トランペットの出だしでおなじみのスペクタクルな作品だ。冒頭部分はシーズン開幕に相応しく、パイプオルガンや鐘を含む豊かなサウンドと多彩な音楽は、オーケストラの醍醐味を満載。複雑な音の綾やオルガンをまじえたパワフルな音響の生体験自体が妙味十分である上に、東京シティ・フィルの現在の技量を知るにもってこいの作品でもある。ちなみにR.シュトラウスの交響詩が同楽団の定期演奏会で披露されるのは、高関就任後初めてのこと。満を持しての挑戦の成果が注目される。勝負のダブルメインともいえる本公演、ぜひ足を運んでほしい。キャサリン・ジェンキンス コンサート ~愛と祈り~世界中を魅了するディーヴァのライヴ再び!文:東端哲也4/30(木)19:00 Bunkamura オーチャードホール問 日本アーティストチケットセンター03-5305-4545 https://www.nipponartists.jp 合唱王国ウェールズに育まれ、英国王立音楽院で声楽を学んだキャサリン・ジェンキンスはあたたかみのある声のメゾソプラノ。幅広いレパートリーを持ち、2004年のアルバム・デビュー以来、世界で最も多作なクラシカル・クロスオーヴァーの歌手として活躍中。 昨年は第二子の出産を経て発表したアルバム『光に導かれて~ガイディング・ライト』を手に来日し、東京で6年半ぶりの単独公演を成功させたのも記憶に新しい。女優業など、マルチな活動でも知られるジェンキンス。最近では水俣病患者のルポルタージュで有名な米国人写真家ユージン・スミスをジョニー・デップが演じ、真田広之ら日本人キャストも多数参加しているアメリカ映画『MINAMATA』に出演しているのも大きな話題。日本公開が待たれるところだが、そんな彼女が今年の4月に再びBunkamura オーチャードホールのステージに帰ってくる。今回は「愛と祈り」がテーマ。敬虔なカトリック信者であるだけでなく、特定の宗教を超えて人々の心の拠りどころとなるスピリチュアルな歌を得意とする彼女にとって、特別な公演になりそうだ。「アメイジング・グレイス」に始まり、オペラやミュージカルのなどの名旋律を東京フィルハーモニー交響楽団をバックに聴かせる。本国では4月にニューアルバム『CINEMA PARADISO』の発売が決定しており、先行シングルとして映画『アリー/スター誕生』のラストでレディー・ガガが熱唱した〈アイル・ネヴァー・ラヴ・アゲイン〉も配信中。もしかしたらコンサートではこれら新曲も聴けるかも? すごく楽しみだ。©David Venni左より:高関 健 ©Stas Levshin/デジュー・ラーンキ ©Palace of Arts - Budapest, Szilvia Csibi

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