eぶらあぼ 2020.4月号
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67ミカ・ストルツマン マリンバ・リサイタル 6/19(金)19:00 王子ホール問 アスペン03-5467-0081 https://www.aspen.jpミカ&リチャード・ストルツマン来日ツアー6/8 東京/TSUTAYA代官山、6/12 愛知/宗次ホール、6/14 鹿児島/風テラスあくね、6/16 福岡/大名MKホール、6/19 東京/王子ホール、6/24 熊本県立劇場コンサートホール、6/26 京都/青山音楽記念館バロックザール※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。ミカ・ストルツマン(マリンバ)バッハにチック・コリア、ジャンルを超えた熱いステージ 取材・文:宮本 明Interview アメリカを拠点に活動する日本人マリンバ奏者ミカ・ストルツマンのリサイタルがすごい。基本的に「バッハとジャズ・コンポーザー」というプログラムなのだけれど、そこにはチック・コリアやジョン・ゾーンらの大御所から、注目の新星ジョエル・ロスまで、ジャズ・コンポーザーを中心に7人の作曲家たちが彼女のために書き下ろした作品が並ぶ。しかもそのうち3曲がこのリサイタルのための委嘱作品で世界初演、さらに2曲が日本初演という、じつに豪華なラインナップ。今年グラミー賞にノミネートされた挾間美帆によるビートルズ・アレンジの委嘱初演も。 しかしそれでも彼女は、「中心はバッハ」ときっぱり。 「リサイタルは日本のみなさんにも〈シャコンヌ〉を聴いていだだくため。CD『パリンプセスト』に収録したこの曲が音楽専門誌で評価され、カーネギーホールで演奏したときは、プログラムの2曲目で、まだコンサートの途中だというのにスタンディング・オベーションが起こりました。演奏動画は、クラシック専門の動画ポータルサイト“History of Music”がシェアしてくれたことで大きく拡散して、アクセス数はすでに22万ビュー超。私の人生で一番の評価をいただいているのが〈シャコンヌ〉。リチャード(=夫であるクラリネット奏者リチャード・ストルツマン)も、初めて認めてくれました」 上述のジョエル・ロスは近年ジャズ・ファンの評価がうなぎ上りの若手ヴィブラフォン奏者だが、今回新作を委嘱することになったのも、面識のない彼がその動画を自分のSNSにシェアしたのがきっかけだったのだそう。リサイタルではバッハをもう一曲、〈シャコンヌ〉同様、彼女自身がマリンバ用に編曲した無伴奏チェロ組曲第3番を演奏する。 ジャズとクラシックのクロスオーバーを、特に意識はしていない。 「好きなことをやっているだけ。ジャズのグルーヴは好きだけれど、そこに深みもないと物足りない。かといって、聴衆がなかなか増えないような現代音楽には興味がないです。私はもっと多くのお客さんにマリンバの魅力を知ってほしいので」 「グラミー賞を狙っている」と明言する。けっして大言壮語ではないだろう。チック・コリアだけでなく、これまでにスティーヴ・ガッド、エディ・ゴメスといったジャズの巨人たちともコラボして、次々に夢をかなえてきた彼女。きっと実現させそうな気がする。勅使川原三郎 アップデイトダンス No.69『トリスタンとイゾルデ』1時間に凝縮された“愛の死”の世界文:森岡実穂 《トリスタンとイゾルデ》は演奏時間4時間超えのオペラだが、勅使川原三郎による佐東利穂子とのダンス版はこの世界を1時間に凝縮してみせる。勅使川原は、トリスタンとイゾルデの互いへの強い「憧れ」と、その完全な達成の(不)可能性にフォーカスする。ほかの人々や社会的な軛が消えた世界でふたりきり、どれだけ互いに焦がれ合っても、ふたつの身体はひとつにはなれず、その「憧れ」の大きさだけが「喪失」によって浮き彫りになる――佐東が表現する、トリスタンの死に直面したイゾ3/20(金・祝)~3/23(月)、3/25(水)~3/28(土) カラス・アパラタス問 KARAS 03-6276-9136 http://www.st-karas.comphoto by Akihito Abeルデの声なき慟哭は圧巻だ。そしてその先にある「愛の死」は……。 70人も入れば満員になる荻窪の小さなスタジオは、この作品を上演するとき、宇宙のような壮大な空間になる。今回はすでに世界各地でも絶賛されている作品の国内3度目の上演であり、この空間で、この人数でその理想形を味わえる貴重な機会。オペラの《トリスタン》を愛する皆様、ぜひこの1時間の体験を。©LISA MARIE MAZZOCCO

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