eぶらあぼ 2020.4月号
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57鈴木優人(指揮) 読売日本交響楽団時代を超えたプログラムでマルチな音楽性を存分に発揮文:柴辻純子第598回 定期演奏会 5/13(水)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp 2020年4月から読響の指揮者/クリエイティヴ・パートナーに就任する鈴木優人が、5月の定期演奏会に登場する。鈴木は、1981年オランダ生まれ。東京藝術大学及び同大学院、オランダ・ハーグ王立音楽院修了。現在は、指揮者、鍵盤楽器奏者、作曲家、プロデューサーとしてマルチな活動を続け、今年2月には第18回 齋藤秀雄メモリアル基金賞(指揮部門)を受賞するなど新時代のホープとして活躍が目覚ましい。 読響には16年「読響アンサンブル・シリーズ」でデビュー以来、共演を重ねるが、定期演奏会は今回が初めて。ベートーヴェンの影響を強く受けたシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」と、20世紀イタリアの作曲家ルチアーノ・ベリオの「レンダリング」を組み合わせた選曲で挑む。ベリオの作品は、シューベルトが未完の交響曲第10番のために残したスケッチをもとに作曲・編集したもの。シューベルトの旋律は補筆せず、その合間をベリオ自身の音楽で修復(レンダリング)、過去と現代の間を行き来する。鈴木自身、J.S.バッハのカンタータBWV190の喪失楽章の復元やモーツァルト「レクイエム」の補筆・校訂を行うなど、音楽学・作曲の観点からも楽譜と向き合ってきた。その経験と彼の指揮者としてのアプローチがどのように結びつくのか興味深い。 さらに、世界最高峰のトランペット奏者マティアス・ヘフスを迎えてのドイツの作曲家オスカー・ベーメの名曲「トランペット協奏曲ヘ短調」も大注目。ヘフスの輝かしい音色と完璧な技巧、高度な音楽性が堪能できるだろう。アルベナ・ダナイローヴァ ヴァイオリン・リサイタルウィーン・フィル初の女性コンサートマスターが贈る名曲の調べ 文:江藤光紀5/23(土)14:00 フィリアホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831http://www.pacific-concert.co.jp他公演 5/22(金)武蔵野市民文化会館(小)(完売)5/24(日)宗次ホール(052-265-1718)5/26(火)いずみホール(06-6944-1188) ダナイローヴァがウィーン・フィル初の女性コンマスに就任したのは2011年、そろそろ10年の区切り目も見えてきたところだ。伝統を守りながら、新時代を開く。これは口で言うほど易しいことではない。ウィーン・フィル団員はウィーン国立歌劇場の公演も同時にこなさねばならない。コンマスとなれば仕事も山積み、加えて女性初ということで言葉にしにくい難しさもたくさんあっただろう。このタフな重責を自然体にこなしつつ、ソリストとしても来日を重ね、ダナイローヴァは私たちにもすっかりおなじみのヴァイオリニストになった。その芯の強さは、ストレートな表現、馥郁たる香りを湛えた音色にもよく表れている。 今回の来日では、ヴァイオリンの歌心と技巧を幻想性やエキゾティシズムの中にたっぷりと解き放つ名曲を並べ、フィリアホール(横浜)の他、東京、名古屋、大阪でも披露する。 ベートーヴェン「春」でクラシカルな構築性を聴かせてから、チャイコフスキー「なつかしい土地の思い出」(抜粋)、骨太な中にメランコリックな情熱を奏でるショーソン「詩曲」と続け、さらにヴァイオリニストとしても活躍したヴィエニャフスキ「華麗なるポロネーズ 第2番」、クライスラー「愛の悲しみ」他、最後はダナイローヴァの故郷ブルガリアの舞曲を用いたヴラディゲロフ「ブルガリアの民族舞踊による幻想曲」で締めくくる。 ピアノは浜野与志男。東京・ロンドン・モスクワ・ライプツィヒとワールドワイドに学び活躍する実力派だ。伝統とグローバリズムの交差が、二人の競演にどう表れるかというあたりにも着目したい。©Julia Weselyマティアス・ヘフス ©Dörte Ebermann鈴木優人 ©読売日本交響楽団

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