eぶらあぼ 2020.4月号
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56©Ayako Yamamoto /UMLLCハンヌ・リントゥ(指揮)フィンランド放送交響楽団(五嶋龍出演)5/27(水)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp他公演(★は五嶋龍が出演)5/23(土) 大阪/ザ・シンフォニーホール★、5/24(日) ミューザ川崎シンフォニーホール★、 5/25(月) 東京文化会館、5/28(木) サントリーホール、5/29(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール★、5/30(土) 新潟/長岡市立劇場※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。五嶋 龍(ヴァイオリン)フィンランド放送響と初共演、自分なりのシベリウスの表現に取り組みたい取材・文:片桐卓也Interview フィンランドを代表するオーケストラであるフィンランド放送交響楽団が5月、来日公演を行う。指揮は2013年からこのオーケストラを率いているハンヌ・リントゥ。ヨーロッパの主要なオーケストラに客演をする他、日本では新日本フィルへの客演でも注目を集めている指揮者である。フィンランド放送響は1927年の結成以来、ベルグルンド、カム、オラモなど自国の名指揮者の薫陶を受けてきた。録音も多く、最近ではライヴストリーミングでの発信にも積極的だ。リントゥのもとでさらなる発展を遂げており、2015年以来の来日公演に期待が集まっている。 今回の来日公演の中ではシベリウスを主体としたプログラムが組まれているが、その中でヴァイオリン協奏曲を共演するのが五嶋龍。2020年は彼のデビュー25周年とも重なり、また久々に日本でシベリウスの協奏曲を取り上げることもあって、その演奏が注目される。シベリウスを代表する傑作であるこの協奏曲について聞いた。 「この作品については作曲家自身の言葉など、様々に語られてきたと思いますが、そうした既存のイメージにとらわれずに自分なりの表現に取り組みたいと思っています。第1楽章の冒頭の部分は、ヴァイオリン独奏は重音で始まるのではなく、単音で奏され、それがずっと続いていきます。ここには孤独な感覚が出ていると思うのですが、それは僕の中ではフィンランドの有名なスナイパーであるシモ・ヘイヘ(注:猟師出身のフィンランドの軍人で、ソ連との戦いで狙撃手として数々の戦果をあげた)をまず思い起こさせます。冬の草原の中で、孤独に敵を待ち続けている、そんな感覚がありますね。第3楽章も力強いリズムが低弦やティンパニで表現されていますが、決して熱い音楽ではない。どこかに冷たさを感じさせる部分があり、それがシベリウスらしさなのかもしれません。音楽が進むうちに自然と作曲家の中から出て来るものを表現していくと、フィンランド的なものに行き着くのかもしれません。実はフィンランドのオーケストラとご一緒するのは今回が初めてなので、その共演の中で新しく発見するものがあったら嬉しいなと思います」 フィンランドを訪ねたことはあり、同国の芸術にも興味を持っている。 「音楽の世界では次々に世界的な前衛作曲家を輩出している国であり、またモダンなデザインの製品を世の中に提供している国でもありますよね。フィンランド固有の伝統というものと、現代の最前線のものという2つの要素を文化の中に感じさせてくれる国だと思います。それは演奏の中にもきっと反映されるだろうし、どんなバランスを持って音楽が表現されるのかにとても興味があります。特に放送交響楽団ということで、最新の音楽にも親しんでいるでしょうし、そうしたオーケストラが自国の作曲家の作品に立ち返る時、どういう世界が展開されるのか、共演が楽しみになります」 今回はその他にシベリウスの交響詩「エン・サガ」、交響曲第5番なども演奏されるが、作曲家の母国のオーケストラとしてフィンランド放送響がどんな響きを聴かせてくれるか、リントゥのリードも含めて期待が高まる。その他、チョ・ソンジンをソリストに迎えてのプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番」とチャイコフスキーの「交響曲第5番」(5/28サントリーホール)というプログラムも用意されている。素晴らしいソリストたちとの共演を楽しもう。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、公演やイベントの延期・中止が相次いでおります。掲載している公演の最新情報は、それぞれの主催者のホームページなどでご確認ください。

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