eぶらあぼ 2020.4月号
179/207

176CDCDCD渡辺俊哉作品集 あわいの色彩シャコンヌ ―CHACONNE―/高橋里奈CANTARES/高野百合絵アンシャンテ/フランボワーズ渡辺俊哉:音の綾Ⅲ、あわいの色彩Ⅱ、声の痕跡、私の知らない歌松岡麻衣子(ヴァイオリン) 松本卓以(チェロ) 篠田昌伸(ピアノ) 菊地秀夫(クラリネット) 松井亜希(ソプラノ) クァルテット・エクセルシオ コンテンポラリー・デュオ 石川星太郎(指揮)J.S.バッハ(ブゾーニ編):シャコンヌ/ドビュッシー:ベルガマスク組曲/シューベルト(リスト編):水上に歌う/ラフマニノフ:幻想的小品集 op.3-2「前奏曲」/リスト:エステ荘の噴水、ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲、シューマン(リスト編):献呈/ショパン:ノクターン op.9-2高橋里奈(ピアノ)ビゼー:歌劇《カルメン》より〈ハバネラ〉/オブラドルス:「スペイン古典歌曲集」より〈エル・ビト〉/ファリャ:「7つのスペイン民謡」より〈アストゥリアーナ〉/トゥリーナ:「歌のかたちをした詩」より〈カンターレス〉/モンサルバーチェ:「5つの黒い歌」より〈黒い歌〉/澤武紀行:磯の上のつままを見れば 他高野百合絵(メゾソプラノ)吉本悟子(ピアノ)ローゼンブラット:2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ、アヴェ・マリア/グアスタビーノ:ロマンス・デル・プラタ/ドホナーニ:ピアノ五重奏曲第1番フランボワーズ【遠藤夏季 中川彩(以上ピアノ)】コジマ録音ALCD-122 ¥2800+税グレイスノーツレコーズJKR001-1/001-2(2枚組) ¥3000+税日本コロムビアCOCQ-85480 ¥2000+税ティートックレコーズYZTT-0003 ¥3000+税「音の綾Ⅲ」「あわいの色彩Ⅱ」は音の数を絞り淡々と進む。聴き手の注意は音と音との関係性やその佇まいに集中し、いつしか自然の声とか宇宙の響きに耳を傾けているような瞑想的な気分へと導かれる。「声の痕跡」は性格の異なるトロンボーンとピアノが対峙する中、音の身振りの差異が明らかにされる。それは前2曲に比べ、遥かにヒューマンでユーモラスだ。「私の知らない歌」は同名の詩から自由にフレーズを選んで、器楽アンサンブルに浮遊させる。意味が生起する境界に言葉を宙づりにすることで、その音響特性を引き出していく。渡辺の“あわいの色彩”は聴き手の感性を研ぎ澄まさせる。(江藤光紀)1991年生まれのピアニスト高橋里奈のデビューアルバムは意欲的な2枚組。ベルリン芸術大学で学んだのち、イタリアと日本を拠点に旺盛なコンサート活動を送っている。自身が愛してやまないドビュッシー(ベルガマスク組曲)、ラフマニノフ(前奏曲op.3-2)、リスト(エステ荘の噴水、ダンテを読んで)などの名曲を、伸びやかかつ繊細なタッチで描き出す。シューベルト(リスト編)の「水上に歌う」は深い歌心で説得力のある山場を形成する。曲想ごとに豊かに音色を変えるが、どこかエレガントな叙情性が通底している。コンサートで生演奏にも触れてみたくなる録音だ。(飯田有抄)若手の登竜門レーベルOpus One第2期生。2018年、東京音楽大学在学中に日生劇場《コジ・ファン・トゥッテ》のドラベッラ役をオーディションで射止めたメゾソプラノの逸材によるデビュー盤。ありきたりのオペラ・アリア集ではなく、大輪の百合の花のように艶やかな《カルメン》で幕を開けつつ、オブラドルス、ファリャ、トゥリーナ、モンサルバーチェと、それぞれに地域色豊かで時代も様々なスペイン歌曲(本人がこよなく愛する)を中心とした選曲が圧巻。最後を飾る、同じ富山県出身の澤武紀行が大伴家持の和歌に作曲した〈磯の上のつままを見れば〉も印象的。 (東端哲也)可憐なジャケット写真に、惑わされてはいけない。彼女たちが創り出す響きは、しなやかでありつつ、しっかり骨太な側面も併せ持つ。東京音楽大学卒の遠藤夏季と、フェリス女学院大学卒の中川彩が、2015年に結成したピアノデュオ。ローゼンブラット「コンチェルティーノ」が纏うジャジーで洗練された雰囲気も、本邦初録音となる、ピアノ連弾版のドホナーニ「五重奏曲」に交錯する、凛とした雰囲気とロマンティシズムも、余さず掬い取ってゆく。その阿吽の呼吸をして、「1人で弾いているよう」と称える声も。しかし、2人の音楽は「1+1」に留まらぬどころか、無限の可能性を秘めている。(笹田和人)CD

元のページ  ../index.html#179

このブックを見る