eぶらあぼ 2020.4月号
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174CDCDCDMY FAVORITE THINGS/SiriuSマーラー:交響曲第3番 ニ短調/小泉和裕&九響ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番/エルデーディ弦楽四重奏団ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲/大江馨&上岡敏之&新日本フィルガーシュウィン(追川礼章編):天国への階段 ~巴里のアメリカ人/フィン(藤満健編):セイリング ~ニュー・ブレイン/シャーマン(木村トモカ編):チキ・チキ・バン・バン ~チキ・チキ・バン・バン/パセク&ポール(追川編):ア・ミリオン・ドリームズ ~グレイテスト・ショーマン 他SiriuS【大田翔(テノール) 田中俊太郎(バリトン)】 藤満健 木村トモカ 追川礼章(以上ピアノ)マーラー:交響曲第3番小泉和裕(指揮) 九州交響楽団清水華澄(アルト) 九響合唱団 RKB女声合唱団 多目的混声合唱団“Chor Solfa!” 他ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番エルデーディ弦楽四重奏団【蒲生克郷 花崎淳生(以上ヴァイオリン) 桐山建志(ヴィオラ) 花崎薫(チェロ)】ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリン・ソナチネ、母の教え給いし歌(クライスラー編)、ユモレスク(同)大江馨(ヴァイオリン)上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団山中惇史(ピアノ)日本コロムビアCOCQ-85484 ¥3000+税収録:2019年7月、アクロス福岡シンフォニーホール(ライヴ)フォンテックFOCD9831/2(2枚組) ¥3500+税コジマ録音ALCD-1189 ¥2500+税収録:2018年3月、すみだトリフォニーホール(ライヴ) 他オクタヴィア・レコードOVCL-00718 ¥3000+税夜空でひときわ輝く連星シリウスに因んで名付けられた、揃って180cm超えの美男声デュオのデビュー盤は、オペラの世界で最高の好敵手であるテノールとバリトンがミュージカルの名曲を歌い継ぐ魅惑のアルバム。セクシーなハーモニーが聴き慣れた曲も馴染みのない曲もときめかせる。英語歌唱にこだわり〈チキ・チキ・バン・バン〉等がオリジナル版で歌われるのも楽しい。1998年初演の『ニュー・ブレイン』から多様な愛に溢れたナンバー〈セイリング〉が収録されているのも素晴らしい。映画『グレイテスト・ショーマン』の名曲がまるで二人のテーマソングのよう。  (東端哲也)この演奏会を聴けた福岡の聴衆は、さぞや満足して会場を後にしたことだろう。九州交響楽団と、2013年から音楽監督を務める小泉和裕による、マーラー最長の大作、交響曲第3番。19年7月のライヴ録音ながら、驚くべき精度のアンサンブルで、すばらしい演奏を実現した(わずかにずれる箇所も臨場感あふれて好感)。バランス明晰な響きで細部まで磨かれながら、スケールは大きく、豊かな歌にあふれる、小泉ならではのマーラー。雄渾な冒頭のホルン、繊細な場面のソロ楽器のニュアンス、もたれない流れで高貴な大団円を迎えるフィナーレ……幸福な共同作業の貴重な記録である。(林 昌英)後期弦楽四重奏曲シリーズ第3弾は、前作・第11番から14年の時を経て作曲された第12番。冒頭のファンファーレのような和音は重厚に響き、対位法的な両主題はごくごく自然に流れてゆく。和音との対比が美しい。長大な緩徐楽章で聴かれる各変奏では、アンサンブルに粘着力があり、声部ごとの絡みがとてもきれい。特に主調変イ長調に対して遠隔調となるホ長調の第3変奏の讃歌はまさに天上の音楽!! どの変奏でもチェロが大活躍する。ユーモラスな第3楽章スケルツォも、リズムの躍動するフィナーレもとてもいい。そして幻想的なコーダがこれまた美しい。(横原千史)百花繚乱とも言いうる有望な若手ヴァイオリニストたちの中でも、その力量の点で最右翼の1人たる本年26歳の逸材、大江馨のデビュー盤はドヴォルザークの協奏曲。年齢に似合わぬ風格ある表情と類稀なる美音を駆使したその演奏は、「若手にしては・・・」などという留保抜きでこの曲の録音史に独自の地位を占める名演奏だと言って差し支えない。上岡敏之&新日本フィルの献身的なサポートも大江のソロをさらに引き立たせる。併録の3曲は人懐っこい節回しと堂々とした骨太の表現が交錯し、このヴァイオリニストの表現の幅広さを示して余りある。ピアノの山中惇史もツボを心得た好演。(藤原 聡)CD

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