eぶらあぼ 2020.3月号
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76 まずは昨年スタートしたリッカルド・ムーティ「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」。オペラ指揮者としても名高いムーティが2015年にラヴェンナで開始したこのアカデミーは、イタリア・オペラの演奏の伝統を後代に伝えようとするもの。イタリア・オペラには楽譜に書かれていない慣習が多く、書かれた音符の裏の意図を見抜くだけでなく、実践の現場で代々受け継がれてきた知見も不可欠だ。その秘伝が東京でも開陳されるのはうれしい限り。 三年間でヴェルディの3作品を取り上げるが、昨年の《リゴレット》に続き、今年のテーマは《マクベス》。このプロジェクトのために特別編成されたオーケストラをアカデミー指揮受講生が振り、巨匠がアドバイスする。本番までの約一週間にわたり濃密な時間を過ごし、その成果をムーティと指揮受講生による公演で披露する(3/6〜3/15 東京文化会館大ホール他)。ムーティの作品解説レクチャーも行われるが(3/6 東京オペラシティ コンサートホール)、昨年はイタリア人らしいユーモラスな一面も垣間見え、剛毅な音楽にコワモテを想像していたリスナーも親しみを感じたのではなかろうか。 音楽祭の柱となるワーグナー・シリーズ、今回は《トリスタンとイゾルデ》(4/2,4/5 東京文化会館大ホール)だが、これらに加えて今年から読売日本交響楽団をフィーチャーした「プッチーニ・シリーズ」もスタートする。17年のガラ、18年の「スターバト・マーテル」で見事なタクトさばきを見せたスペランツァ・スカップッチが再登場し、「三部作」を上演する(4/18 東京文化会館大ホール)。 ヴェルディ、ワーグナー、プッチーニと、もっぱらオペラでしか聴けない作曲家を選んでいるあたり、的確にツボを押さえているが、東京春祭はオペラだけの祝祭ではない。今年はベートーヴェンの生誕250年アニムーティのオペラ・アカデミーにワーグナー・シリーズ、記念年のベートーヴェンは大作「ミサ・ソレムニス」と豪華ラインナップ 春の上野といえば桜吹雪にクラシック、というイメージは音楽ファンには定着してきたのではなかろうか。昨年15周年という節目を迎えた東京・春・音楽祭は今年さらにパワーアップ。盛りだくさんのラインナップから見どころを押さえていこう。文:江藤光紀東京・春・音楽祭 2020の聴きどころを一挙紹介ヴァーサリーにあたり、「合唱の芸術」シリーズに「ミサ・ソレムニス」が登場する。「第九」とほぼ同時期に書かれたこの宗教的大作を指揮するのはマレク・ヤノフスキ。海外オケの来日公演ではベートーヴェンの名演を多く聴かせてくれたが、東京都交響楽団との顔合わせによる「ミサ・ソレ」は記念イヤーの中でもひときわ目を引く(4/12 東京文化会館大ホール)。 ベートーヴェン関連では他にも総合的サウンド・アート「The Ninth Wave - Ode to Nature」(3/14 東京文化会館小ホール)、若手からベテランまでトップ奏者たちによる室内楽など、充実した公演が組まれているので、チェックしてほしい。リッカルド・ムーティ©Todd Rosenbergマレク・ヤノフスキ©Felix Broedeスペランツァ・スカップッチ©Silvia Lelli

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