eぶらあぼ 2020.3月号
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67佐藤美枝子(ソプラノ) & 西村 悟(テノール) デュオ・リサイタル3/20(金・祝)13:30 横浜みなとみらいホール 問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp佐藤美枝子(ソプラノ)& 西村 悟(テノール)春の訪れにふさわしい華麗なるデュオ・リサイタル取材・文:岸 純信(オペラ研究家)Interview 爽やかな歌のハーモニーが3月のみなとみらいを包み込む。チャイコフスキー国際コンクールの優勝者、ソプラノの佐藤美枝子と、バスケットボールで身体を鍛え、声も歌心も豊かなテノールの西村悟が、ジョイント・リサイタルを開催。プログラムはオペラやミュージカルの名曲に日本語の歌など盛りだくさん。まずは西村から語ってもらおう。 「美枝子さんとご一緒できて嬉しいです。オペラ《リゴレット》の愛の二重唱では、高音域にかけて半音ずつ上がってゆくところが大変ですが、平気な顔で嘘をつく公爵ながら必死にジルダを口説く姿を、一番良い声で聴いていただけるよう頑張ります。一方、オペラ《トゥーランドット》の〈誰も寝てはならぬ〉やミュージカル『ウエストサイドストーリー』の〈マリア〉は、低音域も使って愛をじっくり訴える名曲です。気負わず取り組みます!」 続いて佐藤。 「春らしく、最初に〈さくら横ちょう〉をお届けします。横浜の桜ってどんな風に咲くんでしょうね…。加藤周一さんの詩〈さくら横ちょう〉による歌曲は4作もあるそうですが、今回は神戸孝夫さんの曲を歌います。映画音楽のように表現がダイナミックなんですよ。松本和将さんのピアノも、ホールの大空間を歌と一緒に満たしてくださると思います。オペラでは、ヴェルディの《椿姫》から華やかで激しいアリア〈ああ、そは彼の人よ~花から花へ〉をお聴きいただきます。今の私の声質やテクニックを最もスムーズにお届けできる曲として選びました。また、西村さんとの二重唱では、《リゴレット》のほか、《椿姫》の〈乾杯の唄〉も歌います。ちなみに、皆様に本当に愛されている〈乾杯の唄〉ですが、歌う側にとっては《椿姫》の中で一番難しい曲じゃないかしらと思うんです」 西村が言葉をさらっと挟む。 「知られたメロディですが、譜面を見ると細かい音符がたくさんあって、一つずつ丁寧に歌うのが大変です」 佐藤も続けて「そうなんです。中音域でうねうねと運ぶメロディで難しいです(笑)。声が一番鳴らない音域で言葉をしっかり表現しなければならないので、気合を込めて歌います」と応える。 ここで西村が、「明るいカンツォーネの〈オー・ソレ・ミオ〉でもご一緒しますね」と続けると、佐藤も朗らかに、「西村さんと並ぶと、身長差があり過ぎて『大木にセミ』状態ですが(笑)」とジョークを交え、最後に二人で「祝日の午後のコンサートです! ご来場お待ちしています」と声を重ねてくれた。日本モーツァルト協会 第617回例会 フランソワ・デュモン(ピアノ)モーツァルトの光と闇を映すピアノ曲の傑作を文:寺西 肇 旬の俊英が紡ぐ、天才作曲家のエスプリに触れたい。研究者や愛好家が集う日本モーツァルト協会は、第617回の演奏会(例会)に、フランス音楽批評家協会の新人賞を受賞するなど、注目度が際立つ実力派ピアニスト、フランソワ・デュモンを迎えて、3つのソナタをはじめ、珠玉のピアノ作品を聴く。 弱冠14歳でパリ国立高等音楽院に入学し、ブルーノ・リグットに学んだ。イタリアのコモ湖国際ピアノアカデミーでさらに研鑽を重ね、ショパン国際ピアノコンクールをはじめ、数々の登竜門で入賞。リサイタルやオーケストラ3/4(水)18:45 東京文化会館(小)問 日本モーツァルト協会03-5467-0626https://www.mozart.or.jp©Joseph Berardiとの共演、室内楽にと国際的に活動。モーツァルトのソナタ全集はじめ、ラヴェルの全集や室内楽などの録音も高い評価を得ている。 今回のステージでは、ウィーン時代の初めに成立したソナタ ハ長調 K.330と同イ長調「トルコ行進曲付き」K.331という明るい陽光に満ちた一連の2作品を大枠に、パリ時代に母の死に耐えつつ作曲したイ短調 K.310、そして今度は父の死の直前にウィーンで書かれたロンド イ短調 K.511の悲痛な雰囲気を湛えた2曲を挟み込んだ滋味深いプログラムで臨む。©桑原克典

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