eぶらあぼ 2020.3月号
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66小林美恵 華麗なるヴァイオリンの伝説第5回「クリムトの幻影」 ~小林美恵 ウィーン世紀末を弾く頽廃と耽美に彩られた時代を名手たちが描く文:林 昌英5/24(日)15:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp リクライニング・コンサートをはじめ、独自の企画が際立つHakuju Hall。演奏家自身のプロデュースによるシリーズが多くあるのも、個々人との結びつきを大切にするこのホールならでは。その名シリーズのひとつが「小林美恵 華麗なるヴァイオリンの伝説」である。 ロン=ティボー国際コンクール優勝など華麗な経歴はもちろんのこと、数多くの名演を重ねて活躍を続ける、日本を代表するヴァイオリンの名手である小林。彼女が2018年から開始した本シリーズは、「歴史・アート・社会など、多彩な角度からヴァイオリンの神秘と魅力を徹底解剖」する、意欲的かつ重厚な内容で好評を博している。 第5回「クリムトの幻影」はウィーンがテーマとなる。東方と西方が交わる“民族・文化の十字路”でもあった大都市で、19世紀末からは画家クリムトの作品に象徴されるような耽美と爛熟の文化が生まれた。作家・文化芸術プロデューサーの浦久俊彦のナビゲートで、多角的に文化への理解を深められるステージとなるだろう。世界的名手との共演経験豊富な名ピアニスト、上田晴子が出演するのも嬉しい。 演目はまずクライスラー、マーラー、シェーンベルクと、同地を代表する3人の作品が並ぶ。マーラーは交響曲第5番アダージェットで、原曲の世界をヴァイオリン版で新鮮に堪能する。シェーンベルクの重要作「幻想曲」での小林の構築にも期待。メインはマーラーと親交があったR.シュトラウスの華やかなソナタ。小林と上田の充実の演奏で、爛熟のウィーンに思いを馳せるステージとなる。浦久俊彦 ©新津保建秀垣内悠希(指揮) 愛知室内オーケストラ コンチェルタンテ・シリーズ第1回多彩なソリストたちが登場する新企画が始動!文:長谷川京介3/19(木)18:45 三井住友海上しらかわホール問 愛知室内オーケストラ052-684-5355 https://www.ac-orchestra.com 愛知県ほか東海地方で活躍する演奏家で構成されている愛知室内オーケストラが、「複数の独奏楽器群による協奏曲」というユニークなシリーズを3月から始める。交響曲と独奏協奏曲の中間的な作品を、幅広い時代から継続的に取り上げるという。 記念すべき第1回は、名古屋フィルの首席ゲオルギ・シャシコフら4人のファゴット奏者により、カール=ハインツ・ケーパー「ファゴットカルテットのための協奏曲『Fakturen』」が日本初演(世界初CD化の予定)されることが、大きな話題を呼びそうだ。ケーパー(1927-2011)はドイツの作曲家。今回の演奏は、世界初演をしたロシアの名手ワレリー・ポポフに捧げられる。 華麗なヴァイオリンと陰影に富むヴィオラの対話が美しいモーツァルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」では、コンサートマスター平光真彌と名手、川本嘉子の共演が楽しみだ。 後半は、スペクタクルなシューマン「4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュトゥック」を、ルツェルン祝祭管弦楽団日本公演にも参加した竹村淳司ら4人が演奏。最後は、シューマンの傑作「交響曲第2番」で締める。指揮は、2011年ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し、一躍脚光を浴びた垣内悠希が務める。新鮮で充実したプログラムは、音楽ファンには聴き逃せないだろう。 3月14日には常任指揮者・新田ユリが振る定期演奏会もあり、ベートーヴェン「交響曲第6番『田園』」のほか、聴く機会の少ないゲーゼの「交響曲第6番」も演奏されるので、注目したい。小林美恵 ©Akira Muto上田晴子 ©三浦興一川本嘉子垣内悠希 ©Jean Philippe Raibaud平光真彌

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