eぶらあぼ 2020.3月号
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644/12(日)14:00 東京文化会館(小)問 ミリオンコンサート協会03-3501-5638http://www.millionconcert.co.jp植村理葉 ヴァイオリンリサイタル美音で奏でるクリスタルな感触文:長谷川京介 植村理葉は、ミケランジェロ・アバド国際ヴァイオリンコンクール第1位など、国内外のコンクールに多数入賞、日本とドイツを拠点にソリストとして活躍している。ヨーロッパでオーケストラと共演した数は90回を超える。CDはドイツ・ソニーの他、カメラータ・トウキョウから2枚発売され、音楽専門誌で特選・推薦ディスクに選ばれた。  リサイタルは、田園的なベートーヴェンの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第10番」に始まり、美しい旋律で彩られたシューベルトの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調」が続く。後半は、静謐な美しさに満ちたヘンツェの「ヴァイオリンとピアノのための5つの夜曲」に注目したい。最後はシューマンがブラームス、ディートリヒと共作した「F.A.E.ソナタ」の自作楽章に2つの楽章を追加してまとめた「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第3番」が演奏される。“音が美しく、表現が明澄で、清潔な音楽をつくる”と、ヨーロッパの新聞で絶賛された植村の名演を楽しみにしたい。共演はピアノの佐藤彦大。3/27(金)19:00 高崎芸術劇場問 SAP(エス・エー・ピー)03-6912-0945https://www.sap-co.jp/event/management/千住 明 総合プロデュース「伝統と革新」オペラ《万葉集》 ~明日香風編、二上山挽歌編万葉人の美しき感性を作曲者自身の指揮で表現文:室田尚子千住 明 ©Yoshihiro Kawaguchi 2009年の初演以来、日本オペラとしては異例と言っていい10回以上の再演を重ねてきた千住明作曲・黛まどか台本によるオペラ《万葉集》。この3月に、オリンピック・パラリンピックを記念した「日本博」の文化プログラムのひとつである「群馬県戦略的文化芸術創造事業」として、高崎芸術劇場で上演される。合唱団が一般市民から公募で集められているのも地方創生の一環といえる。 オペラ《万葉集》は歌人である額田王を主人公にした「明日香風編」と、天武天皇の子どもである大津皇子と大伯皇女の悲劇を描いた「二上山挽歌編」の2作から成る。今回は、千住自身の指揮、オーケストラは14年の定期演奏会で本作を取り上げている群馬交響楽団。ソリスト陣はソプラノ・小林沙羅、メゾソプラノ・谷口睦美、テノール・鈴木准、バリトン・与那城敬という日本語歌唱に長けた実力派が揃った。クリエイティブディレクターの田村吾郎が手がける映像も加わり、「日本の美」を音楽とヴィジュアル両面から存分に堪能できる舞台となることを期待したい。3/8(日)14:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677https://www.proarte.jp本山乃のりひろ弘 ピアノリサイタル ̶情動との対峙̶音楽を心の支えとし、真摯に向き合う文:長井進之介 ©Bozzo 審査員に世界的演奏家が名を連ね、海外からの参加者も増加し、その知名度とレベルの高さを、回を重ねるごとに高める東京音楽コンクール。副賞として開催される入賞者リサイタルもその演奏のクオリティの高さとプログラミングの妙で高い評判を得ている。今回の出演者は第12回で第3位に入賞した本山乃弘。大学在学中にフォーカル・ジストニアを右手に発症し、一時演奏活動に制限がかかったものの、それを見事に克服。名匠アルド・チッコリーニに認められ、国内外で多くのオーケストラと共演し、音楽祭にも出演するなど幅広い活動を展開している。 今回のリサイタルは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「悲愴」と第18番に、ラヴェル、ショパン、そしてスクリャービン「幻想」ソナタと幅広い内容の楽曲を盛り込み、研ぎ澄まされた技巧と豊かな音楽性をアピールする内容。逆境にくじけることなく自らの音楽に対峙し続けた本山が奏でるピアノは、深く心を打つものとなるだろう。

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