eぶらあぼ 2020.3月号
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59松山バレエ団 新『白鳥の湖』 全4幕ベテラン2人の初共演で贈る“愛のバレエ”文:高橋森彦3/20(金・祝)15:30 神奈川県民ホール問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-kenminhall.com 松山バレエ団が神奈川県民ホール主催公演として新『白鳥の湖』全幕を上演する。この作品は1994年に清水哲太郎が台本・振付・演出を手がけて初演した一大巨編で、チャイコフスキーの「白鳥の湖」のほぼ全曲を用いる。 舞台は16世紀の神聖ローマ帝国。公女オデットと皇太子の「真の愛」を通して人間のあるべき理想を描くが、肝となるのが「ルネサンス精神」だと清水は言う。闇の世界を象徴する魔王フォン・ロットバルトとの対決を経て“真善美の勝利”を謳いあげる。 今回の話題は公女オデット&黒鳥オディールの森下洋子、皇太子・神聖ローマ帝国新皇帝ジークフリードの堀内充の初共演。舞踊歴69年を迎えた森下と国内外で活躍する重鎮・堀内が壮大な舞踊劇をいかに演じるのか要注目だ。演奏は河合尚市指揮の東京ニューフィルハーモニック管弦楽団。 記者懇談会の席上、森下は堀内の印象を問われ「清々しい。長い間バレエをやっていても“慣れた”感じがない」とストイックな姿勢を称える。堀内は松山バレエ団との稽古を通して「バレエに対する敬虔、尊敬の念の深さ」を感じると話し、「森下先生の芸術観・舞踊観に少しでも近づいていきたい」と意欲を示す。森下は本作を通して「多くの方々に幸せや喜び、生きていることの素晴らしさ、ありがたさ、感謝の気持ちを伝えたい」と抱負を述べた。 表題にある「新」には上演のたびに「新しくしていきたい」という清水の思いが込められている。神奈川県民ホールでは実に25年ぶりの上演となるだけに期待したい。クラウス・マケラ(指揮) 東京都交響楽団北欧から現れた世界を揺るがす才能文:飯尾洋一第901回 定期演奏会Cシリーズ 4/20(月)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第902回 定期演奏会Aシリーズ 4/21(火)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 今もっとも注目される若手指揮者クラウス・マケラが都響の指揮台に再登場する。マケラは1996年、フィンランド生まれ。近年、若くして脚光を浴びる指揮者は決して珍しくはないが、それにしても今年24歳の若さと聞けば、驚かずにはいられない。しかもこの年齢で2020/21シーズンからオスロ・フィルの首席指揮者兼アーティスティック・アドヴァイザーに指名されており、現在スウェーデン放送響の首席客演指揮者も務める。ミュンヘン・フィルやロンドン・フィルなど、各地の主要楽団からも次々と招かれており、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。 マケラはすでに2018年5月に都響に客演して日本デビューを果たし、センセーショナルな成功を収めている。その際のメイン・プログラムはシベリウスの交響曲第1番。決して派手なプログラムではなかったにもかかわらず、SNSなどでも大きな反響を呼び、再度の客演を望む声が多かった。 そして、この4月、マケラはシベリウスとショスタコーヴィチを組み合わせたプログラムで都響に帰ってくる。フィンランド人指揮者である以上、シベリウスはどこへ行っても求められるレパートリーであり続けるだろうが、反ロシア的な愛国の音楽である交響詩「フィンランディア」に、第二次世界大戦の独ソ戦を題材としたショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」を組み合わせるというアイディアはおもしろい。 おそらく今後どんどん多忙になるであろうマケラ。チャンスは逃せない。クラウス・マケラ堀内 充森下洋子 ©Jun Takagi

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