eぶらあぼ 2020.3月号
55/205

52クァルテット・ウィークエンド 2019-2020クァルテット・エクセルシオ × タレイア・クァルテットベテランと次世代の熱い競演文:林 昌英3/15(日)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net 四半世紀を超える活動で、いまや日本の室内楽界を牽引する存在となった、クァルテット・エクセルシオ。「弦楽四重奏の花が豊かに咲き誇ることを目指し、育て、種を広く撒いていきたい」との思いから、彼らが将来性を見込んだ次世代クァルテットとのジョイント・コンサートを、昨年に続いて開催する。 今年の共演は、結成6年目を迎えるタレイア・クァルテット。2014年東京藝術大学在学時に結成、内外のコンクールでもすでに成果を挙げ続けていて、近現代作品を中心にしなやかにして真摯な音楽作りで期待されている。昨年はNHK音楽番組『ららら♪クラシック』の弦楽四重奏の回に出演し、女性4人の可憐な雰囲気とともに、ラヴェルの繊細な音色にこだわる練習風景と鮮やかな演奏で評判になったのも記憶に新しい。 コンサートは、「エクセルシオ」がドヴォルザーク第12番「アメリカ」を。言わずと知れた名作中の名作で、弾きこんできた熟練の技を見せる。「タレイア」はヤナーチェク第2番「ないしょの手紙」を。独特の妖しい魅力に満ちた傑作にして難曲だが、彼女たちの特徴を発揮するレパートリーであり、意欲的な快演を期待したい。ジョイントの作品は、1817年生まれのデンマークの作曲家ニルス・ガーデ(ゲーゼ)の八重奏曲。親しかったメンデルスゾーンの同編成の傑作のような爽やかなロマン、細かい音の動きの楽しさ、そこに加わる北欧の空気感など、愛すべき作品である。ベテランと俊才たちの共演がどんな種を撒き、何を生み出すのか、楽しみなステージとなる。ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団新しい時代のベートーヴェンを近現代の力作とともに文:江藤光紀東京オペラシティシリーズ 第114回4/18(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp 今年はベートーヴェン・アニヴァーサリー。その作品をどう解釈するかは演奏家にとっての試金石だ。ノット&東響はポイントごとに交響曲を取り上げてきたが、この「第2番」をもって全曲踏破となる。 昨年末に聴いた「第九」はとても印象的だった。強力な東響コーラスに対し弦の規模をやや絞り、小気味よいテンポでシャープな音像を実現。終楽章ではエネルギーを一気に爆発させ、現代人の感覚に訴えかけるドラマに仕立てていた。 こうしたアプローチは「第2番」にも生かされるだろうが、ノットの場合、プログラムのカップリングにも深い洞察が含まれている。この曲はベートーヴェンの難聴が進んだ時期に書かれているが、プライベートでの悩みが信じられないほど、活気にあふれたスポーティーな作品だ。今回冒頭に置かれるのはストラヴィンスキーの新古典主義時代のバレエ音楽「カルタ遊び」。両者が共通して持つ身体性に着目しているのではないか。 間に挟まれる酒井健治のヴァイオリン協奏曲「G線上で」は、第23回芥川作曲賞の受賞を受けて書かれた委嘱作だ。ノットは酒井のキャリアの初期から作品を委嘱するなど、その才能を高く買ってきた。独奏は2016年のモントリオール国際音楽コンクールで1位を獲得したライジングスター、辻彩奈。昨年のノット&スイス・ロマンド管の来日公演で、若さに似合わぬ落ち着きと風格を漂わせる名演を聴かせた。 次世代を担う日本人を起用した現代曲をパズルの一枚として、ストラヴィンスキーとベートーヴェンの間に挟むと、さて、どんな完成図が出来上がるだろう?タレイア・クァルテット ©jetcityクァルテット・エクセルシオ辻 彩奈 ©Shumpei Ohsugiジョナサン・ノット ©K.Miura

元のページ  ../index.html#55

このブックを見る