eぶらあぼ 2020.3月号
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51鈴木大介(ギター)ギターで捧げるシューベルトへのオマージュ取材・文:片桐卓也Interview 多彩な人である。クラシック・ギタリストとして可能性のあることにはすべてチャレンジしてきた、そんなイメージのある鈴木大介。 「今年、50歳になります。だから、という訳ではなく、これまで何年も自分なりに考えてきたことがありまして、それは例えばギターの奏法の統合であったり、レパートリーのことであったり、様々な想いが折り重なっていました。そんな時にたまたま同時にシューベルトに繋がる企画が進行していたのです」 今年の「東京・春・音楽祭」では豪華なメンバーとシューベルトの作品を演奏する一夜を開催する(3/21)。そして新たな録音となる『シューベルトを讃えて』(アールアンフィニ/ソニー・ミュージックダイレクト)を昨年10月末に録音し、こちらも3月中旬にリリースされる。 「録音プロデューサーの武藤さんが僕のバッハの演奏を聴いて、ぜひ録音したいと声をかけてくれました。ありがたいお話でしたが、コンサートの計画もあって、今回はシューベルトにしたいとお願いしました。“鈴木は映画音楽を弾くギタリスト”という認識が世間では定着しているようなのですが(笑)、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院に留学時からアカデミックな部分の探究も続けてきて、それをそろそろ後輩たちにも伝える時期かなと思っていたので、こうしてシューベルトにまつわる様々な作品を集めた録音ができたのはとても嬉しいことでした」 新アルバムに収録されたポンセの「ソナタ・ロマンティカ“シューベルトを讃えて”」は1990年代にも一度放送用に録音したことがあるそうで、実に25年ぶりの再録音となった。ヨハン・カスパル・メルツによる歌曲の編曲、ヨーゼフ・ランツの佳品、そしてシューベルト自身の「楽興の時」第2番、第3番のギター編曲版など魅力的なラインナップだ。 「実演でも、これまでに『美しき水車小屋の娘』を様々な歌手の方々と共演させていただき、シューベルトにまつわる作品にはなぜか縁がありました」 「東京・春・音楽祭」では、上村昇(チェロ)との「アルペジオーネ・ソナタ」や、上村のほか豊嶋泰嗣(ヴィオラ)や梶川真歩(フルート)を交えた「ギター四重奏曲 D96」、そして繊細な歌唱が魅力のアリスター・シェルトン=スミス(バリトン)を迎えて、シューベルトの「春」にまつわる歌曲を集めたパートなど、盛りだくさん。 「もしかしたら3時間を超えるコンサートになるかも? でも、ここでしか味わえないコンサートだと思うので、ぜひいらしてください」 またひとつ、“春”の楽しみが加わった。第153回 リクライニング・コンサート 金川真弓 ヴァイオリン・リサイタル目覚ましい活躍が続く若き実力者が登場文:片桐卓也 2018年のロン=ティボー=クレスパン国際コンクールで第2位、19年のチャイコフスキー国際コンクールで第4位など、ここ数年で世界的なコンクールに入賞し、その実力が注目されているヴァイオリニストの金川真弓が、Hakuju Hallの第153回 リクライニング・コンサートに出演することになった。彼女が選んだプログラムはサン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」、リヒャルト・シュトラウス「ヴァイオリン・ソナタ」、エルガー「気まぐれな女」、サラサーテ「序奏とタランテラ」という組み合わせだ。3/25(水)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jpジュゼッペ・グァレーラ 金川は1994年ドイツ生まれ。4歳から日本でヴァイオリンを始め、その後ニューヨーク、ロサンゼルスなどに住んでヴァイオリンの勉強を続けた。現在はベルリンのハンス・アイスラー音楽大学でコリヤ・ブラッハーのもと学んでいる。ロマン派以降の技巧的にも難しい作品を集めたこのリサイタルは、世界各地で学んだ彼女の豊かな音楽性も同時に披露されることだろう。共演は、ピアノのジュゼッペ・グァレーラ。©Yoshinobu Fukaya金川真弓 ©Francisca Blaauboer東京・春・音楽祭 2020シューベルトの室内楽Ⅰ~鈴木大介(ギター)と仲間たち3/21(土)18:00 東京文化会館(小)問 東京・春・音楽祭チケットサービス  03-6743-1398 https://www.tokyo-harusai.comSACD『鈴木大介/シューベルトを讃えて』アールアンフィニMECO-1058 ¥3000+税3/18(水)発売

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