eぶらあぼ 2020.3月号
51/205

48高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団最高の歌手陣とともに集大成として臨む《トスカ》文:柴辻純子第332回 定期演奏会 3/14(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 常任指揮者の高関健とともに躍進する東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団が、3月定期演奏会でプッチーニの歌劇《トスカ》(演奏会形式)に挑む。東京シティ・フィルの演奏会形式上演のオペラといえば、2000年代に当時の常任指揮者(現 桂冠名誉指揮者)、飯守泰次郎の指揮で《ニーベルングの指環》全曲など数々のワーグナー作品を取り上げ、大きな話題を集めた。同楽団は最近も年に1回オペラに取り組むが、高関が「その集大成として選んだ」と語る《トスカ》は、マエストロにとって思い入れのある作品だ。 桐朋学園大学卒業後、カラヤンのアシスタントを務めていたベルリン留学時代、カラヤン指揮ベルリン・フィルの《トスカ》に衝撃を受けたという。舞台が作られてなくても、プッチーニの音楽がもつ激しく厳しい情熱、オーケストラの精妙な響きや多彩な表現などストレートに訴えかけてきた。その体験は忘れ難く、今回満を持して取り組む。 タイトルロールは世界的に活躍する木下美穂子、カヴァラドッシ役は小原啓楼、スカルピアの上江隼人、アンジェロッティの妻屋秀和ら、舞台経験豊富な、いま日本で《トスカ》を上演するのに最高の歌手たちが揃う。各幕の名アリアをはじめ、全編に溢れるプッチーニの甘美な旋律をドラマティックに歌い上げるだろう(合唱:東京シティ・フィル・コーア)。 楽譜を緻密に分析し、常に新たな切り口を示してくれる高関。《トスカ》でも豪華かつ刺激的な演奏に期待が高まる。左より:高関 健 ©Stas Levshin/木下美穂子 ©Yoshinobu Fukaya/aura/小原啓楼/上江隼人/妻屋秀和シモーネ・ラムスマ(ヴァイオリン) ~無伴奏リサイタル~次代をリードする若き才媛の情感あふれるステージ文:飯尾洋一4/5(日)14:00 王子ホール問 王子ホール チケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp オランダ出身の気鋭、シモーネ・ラムスマが無伴奏ヴァイオリンによるリサイタルを開く。ラムスマはこれまでにロイヤル・コンセルトヘボウ管やシカゴ響、ニューヨーク・フィルなど、トップレベルのオーケストラと数多く共演し、60曲を超えるヴァイオリン協奏曲のレパートリーを誇るという才人。日本ではすでに2017年、18年に読響と共演を果たしている。録音ではショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番や、グバイドゥーリナのヴァイオリン協奏曲「今この時のなかで」といった作品で、雄弁な演奏を聴かせている。 そんな幅広いレパートリーを誇るラムスマが無伴奏リサイタルのために組んだのは、テレマン、バッハ、ヒュー・ワトキンス、イザイからなるプログラム。バロックから現代までの幅広い時代の作品が並べられた。テレマンの「12の幻想曲」より第7番と、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番は、同時代のドイツを生きたふたりの作曲家の親和性の高さを気づかせる。ワトキンスは1976年、ウェールズ生まれの作曲家。アリーナ・イブラギモヴァのために書かれた「パルティータ」が演奏される。無伴奏の「パルティータ」となればバッハを連想せずにはいられないが、作風はそんな期待に沿ったもの。これにイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番と同第3番「バラード」が続く。鮮やかな技巧とスケールの大きな表現を披露してくれることだろう。 ©Otto van den Toorn

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る