eぶらあぼ 2020.3月号
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47ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団世界が注目するインキネンが放つ現代のベートーヴェンとブルックナー文:小室敬幸第719回 東京定期演奏会 4/17(金)19:00、4/18(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://www.japanphil.or.jp 日本フィルでは2009年から首席客演指揮者、16年からは首席指揮者を務め、長きにわたり蜜月関係を築くピエタリ・インキネン。昨年には日本フィルにとって13年ぶりとなるヨーロッパ・ツアーを成功させた立役者でもある。この20年夏にはバイロイト音楽祭で《ニーベルングの指環》4部作を指揮することになっており、世界中から注目を集める存在であることは間違いない。彼が日本フィルと19年10月から取り組みはじめたのが、2シーズンにわたる「ベートーヴェン・ツィクルス」だ。生誕250年のアニヴァーサリーイヤーとはいえ、他のオーケストラはツィクルスをするとしても交響曲に限定したり、あるいは様々な指揮者によって振り分けたりするところを、なんと日本フィルはインキネンひとりで交響曲だけではなく協奏曲なども取り上げるという意欲をみせる。 シリーズ第3弾は、40代半ばを迎えたロシアの名ピアニスト、アレクサンドル・メルニコフをソリストに招いてのピアノ協奏曲第2番。イザベル・ファウストなど、世界トップクラスのアーティストと共演を重ねるメルニコフが、ベートーヴェン初期の佳曲をどう聴かせるか楽しみだ。そして後半は人気作、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。これまで日本フィルと演奏した第5番以降の交響曲で、ゆったりとしたテンポで豊穣な響きを堪能させてくれる古き良き趣のブルックナーを披露。多くのファンから熱烈な支持を受けているだけに、今回も期待して良いだろう。マリア・カラス in コンサート最新ホログラム技術で甦るディーヴァの姿文:東端哲也5/16(土)、5/17(日)各日14:00 Bunkamura オーチャードホール問 チケットスペース03-3234-9999 https://avex.jp/classics/mariacallas2020/ 未だ多くの謎に包まれた、53歳の早すぎる死から42年余り…。遺された絶頂期の録音からすでに60年以上を経てもなお、オペラ・ファンの心を捉えて離さない歌姫マリア・カラス。幅広い音域とそれを自在に操ることのできるテクニックと音楽的な知性、加えて美しい舞台姿に女優としての完璧な演技力まで備えていた不世出のソプラノ。その波瀾に満ちたライフ&アートはこれまでにも幾度となく劇場やテレビでドラマ化され、舞台や記録映像を集めたドキュメンタリーも公開されるなどして、その伝説はもはや出尽くしたかに思えたが、何と今年5月、東京のステージにDIVAが再臨する! これはカラスの過去のステージ映像を最先端の3Dホログラム技術とレーザー・テクノロジーで特殊なスクリーンに投影し、まるで生きているかのような立体的な映像を映し出して、臨場感たっぷりに生演奏のオーケストラと共演させるというもの。すでに2018年末から欧米や中南米各地でツアーを成功させてきた夢の企画が、ついにここ日本でも実現する(演奏:アイミアー・ヌーン指揮 東京フィルハーモニー交響楽団)。 ホログラムといってもその歌唱はすべてオリジナル音源を使用するので、昨年末『NHK紅白歌合戦』を賑わせたAIによる美空ひばりとは決定的に違う。演奏曲目もビゼーの《カルメン》やヴェルディの《マクベス》、プッチーニの《トスカ》、ベッリーニの《ノルマ》など、いずれも極めつけアリアばかりなので期待が高まる。ここからまた新しい何かが始まる予感!アレクサンドル・メルニコフ ©Marco Borggreveピエタリ・インキネン ©堀田力丸

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