eぶらあぼ 2020.3月号
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滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロを披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーではびわ湖ホールが主催する注目の公演をご紹介します。びわ湖ホールPreviewびわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/6/27(土)15:00 びわ湖ホール女は、この猛女役で欧州中を唸らせてきた。筆者が面会した折も、「アビガイッレ役を受けるたび、『それは危険だ!』と周囲はすぐ反対したの(笑)。でも、何が向いているか自分で分かっているから大丈夫!」と朗らかに語っていた。そして驚いたことに、メゾの大物ヴェッセリーナ・カサロヴァも、控え目なフェネーナの役で出演するという。この3人が舞台に揃えば、《ナブッコ》の成功間違いなしだろう。 また、この来日公演では、日本とも所縁深い指揮者、アンドレア・バッティストーニがタクトを執る。30代初めという若いマエストロだが、人一倍俊敏な棒捌きで大歌手たちも納得させるに違いない。ちなみに、先述の望郷の合唱曲〈行け我が想いよ〜〉は、イタリアで《ナブッコ》が上演されるたびアンコールがかかり、その際は客席も一緒に歌うのが慣例である。ならば、びわ湖ホールでも、喝采の後、「歌声の波」が場内一体で押し寄せるかも。今から期待できそうだ。豪華キャストで贈る若きヴェルディの意欲的な大作文:岸 純信(オペラ研究家)パレルモ・マッシモ劇場 ヴェルディ作曲 歌劇《ナブッコ》 地中海最大の島であり、歴史の波に翻弄されたシチリア。その中心地パレルモは、かつては王都であった街。ヴィスコンティの映画『山猫』も、ヴェルディがオペラ化した13世紀の晩禱(ばんとう)事件も、人々の勁(つよ)い心根をドラマの柱とするものである。 ところで、今のパレルモ市民が何より誇りに思うのが、文化の象徴たるパレルモ・マッシモ劇場(Teatro Massimo)である。19世紀の末に完成し、席数は1400足らずと中サイズだが、舞台の面積が非常に広いことで知られ、マリア・カラスをはじめ歴史的な歌手の出演も多いという、堂々たる「南欧の大歌劇場」である。 来る6月、このマッシモ劇場が久々に来日公演を行い、湖面に臨む「西日本の大劇場」びわ湖ホールでイタリア語の大作オペラを上演するとのこと。演目は、歌劇王ヴェルディの出世作であり、ヘブライ人のコーラス〈行け我が想いよ、黄金の翼に乗って〉が何より人気の《ナブッコ》(1842年初演)である。 ドラマは、旧約聖書に名高いバビロニアの王ネブカドネザル2世(イタリア語でナブッコ、もしくはナブコドノゾル)を主人公とする。物語の背景は、ヘブライ人がバビロニアに連れ去られた「バビロン捕囚(ほしゅう)」の史実。ユダヤの神を冒瀆したことで落雷を受け、錯乱状態にあるナブッコは、自分と女奴隷の間に生まれた娘アビガイッレが権力を握り、正当な王位継承権を持つもう一人の娘フェネーナを処刑しようとしていることに気づく。妹へのコンプレックスが渦巻くアビガイッレは、父親の哀願を頑として撥ねつけるが、最後にはナブッコが回復。皆でユダヤの神への忠誠を誓うところで幕となる。 今回のナブッコ役は、イタリアが誇るバリトン、アルベルト・ガザーレ。以前、インタビューした際は万年青年のイメージが強かったが、その彼も今や王者役に相応しいキャリアの持ち主に。厚く豊かな響きで役柄の風格を示してくれるだろう。続いてはアビガイッレ役のソプラノ、マリア・グレギーナに注目。肉厚の声ながら細かい音符も鋭く歌い上げる彼アルベルト・ガザーレアンドレア・バッティストーニ ©Andrea New Genovaヴェッセリーナ・カサロヴァ©Suzanne Schwiertzマリア・グレギーナ©Petra Stadler

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