eぶらあぼ 2020.3月号
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38全身全霊をかけて挑むベートーヴェンのソナタ全32曲取材・文:伊熊よし子interview コンスタンチン・リフシッツKonstantin Lifschitz/ピアノ首都圏8館共同制作 コンスタンチン・リフシッツ ベートーヴェンへの旅 ピアノ・ソナタ全32曲演奏会4/25(土)よこすか芸術劇場(046-823-9999)、4/26(日)神奈川県立音楽堂(チケットかながわ0570-015-415 )、4/29(水・祝)フィリアホール(045-982-9999)、5/2(土)狛江エコルマホール(03-3430-4106)、5/3(日・祝)武蔵野市民文化会館(小)(完売)、5/4(月・祝)東京文化会館(小)(ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212)、5/6(水・休)所沢ミューズ アークホール(04-2998-7777)、5/8(金)ウェスタ川越(049-249-3777)https://www.japanarts.co.jp/Lifschitz2020/ ※詳細は左記ウェブサイトでご確認ください。 2020年はベートーヴェン生誕250年にあたるアニヴァーサリー・イヤー。これを記念し、「天才」と称されるウクライナ生まれのピアニスト、コンスタンチン・リフシッツが首都圏8館でピアノ・ソナタ全32曲を演奏する「ベートーヴェンへの旅」と題したシリーズを行う。 リフシッツは5歳からモスクワで学び、イギリスやイタリアでも歴史に名を残す偉大なピアニストに師事した。10代のころからその天才的なピアニズムが注目され、著名な指揮者や各地のオーケストラと共演を続け、才能を開花させていく。「私は、子どものころはベートーヴェンはあまり好きではなかったんですよ。モーツァルトの方が入りやすい世界でした。でも、大人になるにつれ、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの世界に徐々に魅了されるようになり、いまではなくてはならない存在です。ベートーヴェンは奏者に“考える”ことを要求し、その作品は楽譜の裏側まで読み込まないと理解できません。短時間の練習で納得のいく演奏はけっしてできないのです。作品と真摯に対峙し、十分な時間をかけ、ベートーヴェンの魂に寄り添い、そして自分の内面とも対話しなくてはならないからです」 今回は8会場にそれぞれテーマを基にしたソナタ3〜5曲を振り分け、選曲を行っている。「ベートーヴェンのソナタは暗く悲愴感ただよう、奥深い作品が多い。私はその部分にもっとも強く惹かれるのです。ベートーヴェンは過酷な人生のなかでどう生きるべきか、音楽家としてやるべきことは何かといつも自問自答していました。それがすべて作品に投影されています。特に最後の第30番から32番までのソナタは、作曲家としての集大成とも言われる内容の濃い作品です。私はこの3曲に関しては、本当に長い時間をかけて理解を深めていきました。別離、死、苦悩などが濃密に投影され、魂の最後の旅を描き出しているような作品群だからです。これらを演奏すると、ピアニストの人生もまた露わになってしまう。真の意味で怖い作品だといえます」 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲のなかにはタイトルの付いた有名な作品がいくつもある。《悲愴》《月光》《熱情》《ハンマークラヴィーア》《告別》《ワルトシュタイン》《テンペスト》など。しかし、それ以外の演奏される機会に恵まれない曲にも注目すべき点は多い。リフシッツはそこに着目している。「ふだん演奏されるソナタは限られています。でも、こういう機会に他のソナタにも目を向けてほしい。ベートーヴェンはそれぞれの作品に時代、歴史、楽器の変遷、社会状況、自己の感情などを盛り込んでいます。ひとつずつのソナタからそれらが浮き彫りになり、32曲すべてを演奏することはまさにベートーヴェンへの旅を意味します。私は演奏でみなさんをベートーヴェンの時代へと導き、ともに旅をしたいと考えています。もちろん、1曲ずつ全身全霊を傾けて演奏します」 その心意気を演奏から受け取りたい。©N.Ikegami

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