eぶらあぼ 2020.3月号
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191出るかは当日のお楽しみである。結果からいうと、いま世界で注目のコンテンポラリー・バレエや演劇的な作品もあり、なかなかのクセモノ揃いの回で楽しかった。前回受賞した長谷川暢の受賞公演は、ハーモニカから太鼓まで楽器を弾きまくるハジけっぷり。それをダンスとして(ヌケヌケと)提示して見せたのだった。オレが今回「NEXT ONE賞」に選んだのは、バレエベースで「次」への成長が期待される神島百合香。鈴木ユキオ賞はすでに海外でもキャリアを積んでいる久保田舞がそれぞれ受賞した。 冒頭に書いたように、この号が出る頃はフェスやコンペティションの真っ最中だろう。若いアーティストに助言しておくとするなら、「やりたいことをやりきれ。内容が多すぎてまとまらず、やりっ放しで投げ出すくらいの高密度の作品なら、なお良し!」ということだ。あと「メチャクチャやってます風の作品」は、騒がしいだけでほとんどがフツーなのだと知れ。世の価値観を揺さぶってこそ、真のメチャクチャなのだ。見終わった観客が電車に乗って家に帰ってメシを食って風呂に入って髪を洗っているときに、ハッと「あのダンスはすごかったなー」と思い出してシャンプーが目に入って痛がる、というくらいのパワーが自分の作品にあるか、つねに問い続けることだ。ガンバレ!第65回 「新型ウイルスで混迷は続く。しかし全国各地でショウも続くぜ」 この連載を書いている時点では、まったく先行きが読めない新型コロナウイルス。どこまで広がるか、いつ終息するかの目処も立っていない。世界各国、アジアでも渡航禁止や検疫が強化され、かなりの数の国際的なイベントが軒並み中止になっている。しかも2月は日本の舞台芸術界にとって、年に一度のハイシーズンである。横浜ダンスコレクションにTPAMという二大国際イベントに加えて、今年は三年に一度のHOTPOT(横浜・ソウル・香港で、毎年持ち回りで行う)国際フェスまで加わっている。数百人単位で世界中のダンス関係者が横浜に集まるのだ。ただでさえ飛行機に劇場にミーティングにホテルと、人が多いところに行く宿命の人々だからな。この号が出る頃には終息していることを願う。 さて、いつもならアドバイザーとして行っている福岡ダンスフリンジフェスティバルも二年に一度になったので、今年はお休み。もうひとつアドバイザーをしている北海道ダンスプロジェクトの「新たなる挑戦〜NEXT ONE 2020〜」も同様に隔年開催となり、昨年はお休みだったが、今年は開催された。これは札幌の地でコンテンポラリー・ダンスを根付かせるための活動で、ここから出てすでにプロとして海外で活躍している人もいる。 いちおうコンペティションだが、「上演直後にオレやゲスト(今年は鈴木ユキオ)から客前で講評を受ける」という独特な形式だ。これは聞いている観客も一緒に考えることで、観客育成に役立つのである。募集は全国が対象で、全15作品のうち約半分は関東の他、福岡・愛知・宮城など他県から。関東とは違ったセレクションでなければ意味がないので、決勝進出の審査にオレは関わらず、どんな人がProleのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。http://www.nori54.com乗越たかお

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