eぶらあぼ 2020.3月号
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176CDCDCDメロディア/山田岳ピアニズム2 ドビュッシー:前奏曲集第1巻&第2巻/長尾洋史マーラー:交響曲第9番/尾高忠明&大阪フィルショパン:ワルツ集(全曲)/カール=アンドレアス・コリーミシェル・ヴァン・デル・アー:栗毛色/近藤譲:オリエント・オリエンテーション/山本裕之:葉理/三輪眞弘:七ヶ岳のロンド/シモン・ステーン=アナーセン:実践の難しさ/中川統雄:滅びの中の滅び/西風満紀子:メロディア―ギター/ロイス・V・バーク:五ギター山田岳(ギター/パフォーマンス)佐藤紀雄(エレクトリック・ギター)ドビュッシー:前奏曲集第1巻・第2巻長尾洋史(ピアノ)マーラー:交響曲第9番尾高忠明(指揮)大阪フィルハーモニー交響楽団ショパン:ワルツ第1番~第19番カール=アンドレアス・コリー(ピアノ)コジマ録音ALCD-123 ¥2800+税録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9026 ¥2800+税収録:2019年4月、フェスティバルホール(ライヴ)フォンテックFOCD-9828/9(2枚組) ¥3500+税マイスター・ミュージックMM-4073 ¥3000+税音楽が音楽の概念の外側へと逃走していく、困った、そして尖ったアルバムだ。電子音との競演(ヴァン・デル・アー)、摩擦音などの多重録音(三輪)、エレキギターとベースの録音の作曲家自身によるリミックス(中川)。口笛や歯ぎしりによるパフォーマンス(ステーン=アナーセン)の後には、調弦をずらした5台のギターがパワフルな打撃音を加える(バーク)。その中にあって、西風作品の単音のつながりがポエジーを放つ。音楽は何であってもいいのだという自由さに、聴き手の感性もいつの間にか解放されていく。山田岳のパフォーマーとしての類まれなる才能あってこそのアクロバットだ。(江藤光紀)ソロはもちろん、アンサンブル奏者としても多くの演奏家の厚い信頼を集め、現代音楽の演奏でも非常に高い評価を受けている長尾洋史。その精巧なピアニズムは多くの聴衆を魅了してきた。今回のアルバムは、そんな彼の透明感のある音色と響きの多彩なコントロールを存分に楽しめる。明瞭なタッチと鮮やかな指さばき、そして緻密に計算された音色の配置だからこそできる演奏は、作品の輪郭を浮き彫りにしており、〈花火〉などの技巧的な作品はもちろん、〈亜麻色の髪の乙女〉などの音数の少ない作品でもその効果が最大限に発揮されている。「前奏曲集」の“名盤”に加えたい新譜だ。(長井進之介)尾高忠明&大阪フィルの4月定期は“大作”が定番だが、昨年演奏されたマーラー「9番」のライヴCDがリリースされた。冒頭第1主題は優しい表情が特徴的で、次第に諸動機が錯綜して複雑になって頂点を迎える。この一連の最初の部分が早くも、素晴らしく感動的だ。大編成のオケとはいえ、テクスチュアは室内楽的で、丁寧に作られ、とても精緻な彫琢が重ねられて、極めて美しい。楽しげでありながら、物憂げな第2楽章、軽快に始まり次第に追い込むブルレスケ、そして音楽美の究極の姿が連綿と続く終楽章。尾高&大阪フィルの新境地を世に問う清新なマーラーだ。(横原千史)これまでにショパンのマズルカ、ポロネーズ、ノクターン、エチュード、バラード&即興曲と、精力的にショパンの作品集をリリースしてきたスイス出身のカール=アンドレアス・コリーが、ワルツ全曲を録音した。なんといってもその柔らかな躍動感、ハーモニーの変化を繊細に捉えた移ろいゆく気分、そして旋律線どうしの立体的な表現が、聴く者の心を存分に踊らせてくれる。録音は全体にまろやかな音質で、華やかなフレーズも硬質に響かず、とてもリリカル。喜び溢れるワルツから、メランコリックな表情のワルツまで、全19曲にわたり落ち着いた佇まいの推進力が美しい。(飯田有抄)CD

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