eぶらあぼ 2020.3月号
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174CDCDCD月に憑かれたピエロ/坂入健司郎ブラームス:交響曲第1番 他/上岡敏之&新日本フィルショパン:4つのバラード/楊麗貞ヴィヴィアーニ:教会と室内のためのカプリッチョ・アルモニコ/朝吹園子シェーンベルク:月に憑かれたピエロ/大澤壽人:空の幻想坂入健司郎(指揮)中江早希(ソプラノ) 増田達斗(ピアノ) 泉真由(フルート/ピッコロ) 中舘壮志(クラリネット/バスクラリネット) 髙橋奈緒(ヴァイオリン/ヴィオラ) 朝吹元(チェロ)ブラームス:交響曲第1番ベートーヴェン:交響曲第9番より第3楽章上岡敏之(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団D.スカルラッティ:ソナタ K.202/モーツァルト:ピアノ・ソナタ第3番/ショパン:夜想曲第16番・第17番、バラード第1番~第4番楊麗貞(ピアノ)ヴィヴィアーニ:「教会と室内のためのカプリッチョ・アルモニコ」より トッカータ第1番・第2番、シンフォニア・カンタービレ、ソナタ第1番・第2番、カプリッチョ第1番・第2番、シンフォニア第1番・第2番、アリア第1番~第6番、バレット 他朝吹園子(バロック・ヴァイオリン) 西山まりえ(チェンバロ/バロック・ハープ) 懸田貴嗣(バロック・チェロ)日本コロムビアCOCQ-85479 ¥2000+税収録:2018年3月、すみだトリフォニーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00712 ¥3200+税ナミ・レコードWWCC-7916 ¥2500+税OMFKCD-2075 ¥2545+税気鋭のアーティストを世に送り出す新レーベルに、知る人ぞ知る異色の指揮者、坂入健司郎が登場。作品はなんと「月に憑かれたピエロ」。シェーンベルクの無調時代の「熱狂」が内包された代表作にして問題作に、坂入も劣らぬ熱狂をもって臨んでいる。中江早希の完璧かつ妖艶な声とともに、徹底的に磨き抜かれたアンサンブルから自ずと妖しい空気が立ち昇り、しかも演奏者個々人の表現の喜びまで感じられるのが驚き。職人的な高精度と「面白く聴かせてなんぼ」のエンタメ精神が融合していると言うべきか。坂入の実力を知らしめるばかりか、この傑作のファーストチョイスになり得る一枚。(林 昌英)すみだトリフォニーホールで毎年3月に開催される「すみだ平和祈念音楽祭」。東京大空襲で大きな被害を受けたこの地から、ここを本拠地とする新日本フィルがホール開館より実施してきた演奏会であるが、2018年は上岡敏之の指揮によってブラームスの交響曲第1番が演奏された。本CDはそのライヴ録音。これが非常にユニークな演奏で、極めて快速調のテンポと独特のディナーミク、アーティキュレーションを駆使、重厚さと軽快さを兼備したまさに上岡にしか成し得ない演奏に仕上がっている。アンコールのベートーヴェン「交響曲第9番」第3楽章もまた然り、まさに唯一無二。(藤原 聡)楊麗貞は桐朋学園大学を卒業後、国内はもちろんポーランドに米国、そして台湾やシンガポールで演奏活動を展開してきたピアニスト。その演奏活動の中心には絶えずショパンの作品があり、ショパン国際ピアノコンクールでのディプロマ獲得や第1回日本ショパン協会賞受賞など、彼女の奏でるショパンは多くの場で高く評価されてきた。それはやはりショパンの魂を伝えてくれるような凛とした響きの音色、内に秘めた情熱を感じさせる豊かな歌心にあろう。特に今回のディスクの核である4曲のバラードや夜想曲では、繊細な音色のコントロールや絶妙なルバートといった巧みな表現を楽しめる。(長井進之介)「異国から来た彼が、どう活躍の幅を広げたのか。様々な個性と可能性を秘めた曲集には、その答えがある気がします」。スイス・バーゼルを拠点とするバロック・ヴァイオリン奏者の朝吹園子は、17世紀後半にインスブルックで活躍したイタリア人作曲家、G.B.ヴィヴィアーニによる「カプリッチョ・アルモニコ」を、こう位置づける。シンプルな楽譜へ生命を吹き込むのは、奏者自身の創意。虚空から降る音を受け取り、織り上げてゆく。共演の西山まりえ(チェンバロ/ハープ)と懸田貴嗣(チェロ)も、朝吹の思い入れに寄り添い、時に自パートを熱く拮抗させて、心に響く音の空間を形創る。(寺西 肇)SACD

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