eぶらあぼ 2020.3月号
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172CDCDCD近代イギリス ピアノ作品選/今野尚美武満徹:管弦楽曲集/諏訪内晶子&P.ヤルヴィ&N響6人組誕生!/青柳いづみこ&高橋悠治上原彩子のモーツァルト&チャイコフスキーアイアランド:白昼夢/ブリッジ:3つのスケッチ、おとぎ話組曲/スコット:蓮の国、セキレイ/バックス:ウオッカの店で/モーラン:刈り入れ時/メンデルスゾーン:幻想曲「スコットランド・ソナタ」/フィンジ:エクローグ 他今野尚美(ピアノ)武満徹:弦楽のためのレクイエム、ノスタルジア―アンドレイ・タルコフスキーの追憶に―、ハウ・スロー・ザ・ウィンド、遠い呼び声の彼方へ!、ア・ウェイ・ア・ローンⅡ諏訪内晶子(ヴァイオリン)パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)NHK交響楽ミヨー:子供のために―ジャン・コクトーの3つの詩/プーランク:4手のためのソナタ/タイユフェール:イマージュ/デュレ:2つの小品/オネゲル:7つの小品/オーリック:アデュー・ニューヨーク/サティ:パラード―1幕の現実的なバレエ/6人組のアルバム青柳いづみこ、高橋悠治(以上ピアノ)モーツァルト:キラキラ星変奏曲、幻想曲ニ短調、ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付」/チャイコフスキー:四季上原彩子(ピアノ)ナミ・レコードWWCC-7915 ¥2500+税収録:2018年2月、サントリーホール(ライヴ) 他ソニーミュージックSICC-19045 ¥3200+税コジマ録音ALCD-7246 ¥2800+税キングレコードKICC-1501 ¥3000+税イギリスの近代ピアノ作品を集めた、温かく叙情的なアルバムだ。18歳より英国王立音楽院にて学び、数多くの受賞歴をもつ今野尚美が、アイアランド、ブリッジ、スコット、バックスらの選りすぐりの小品を思いのこもったタッチで紡ぐ。さらに、英国を愛したメンデルスゾーンの幻想曲「スコットランド・ソナタ」ではスケールの大きな音楽を聴かせ、フィンジの「エクローグ」2台ピアノ版を多重録音し、作品の情感を切々と訴えかける。今野自身がライナーで紹介するワーズワースの言葉「素朴な暮らし 思いは高く」をまさに音楽で伝えてくれる、英国音楽好きにはたまらない一枚。(飯田有抄)パーヴォの”武満観“とも言うべきものが伝わってくるアルバムだ。最初に収められた「弦楽のためのレクイエム」は、透明な音の塊が突如として空間に出現したという印象だ。一瞬にして聴き手の懐へと滑りこみ、確かな存在感を放つ。そのシュールな音の佇まいにおののいていると、「ノスタルジア」ではヴァイオリン(諏訪内晶子)の慟哭の中で音楽が流れ出し、「ハウ・スロー・ザ・ウィンド」で豊穣な音の織物へと発展する。書かれた音を精密に立ち上げるだけでなく、5つの管弦楽曲を連ねることで武満音楽の特性を、筋を通しながら捕まえた点が貴重で、今後の規範的な演奏の一つとなろう。(江藤光紀)経緯、詳細は椎名亮輔氏の読み応えあるライナーに譲るとして、1920年の結成からちょうど100年ということに因む、フランス6人組+その集結のきっかけとなったサティの「パラード」を収めたなんとも素敵なアルバム。中でも最も有名なのがプーランクの「4手のためのソナタ」とサティの「パラード」であろうが、他の曲もおしなべて魅力的。単純にみえて和声的な捻りのあるミヨー、タンゴやストラヴィンスキーの影響を感じさせるオネゲル、フォックストロットへの愛と皮肉を交えた模倣であるオーリックなど、どれも機知と閃きが溢れる。青柳いづみこ&高橋悠治の演奏もウィットに富むものだ。(藤原 聡)チャイコフスキー国際コンクール優勝から17年を経た上原彩子の、ロシアもの以外の初録音。チャイコフスキーと彼が敬愛したモーツァルトの意味あるカップリングが光っている。「キラキラ星変奏曲」は優しく温かな表現で、母が子に弾いて聴かせるかのよう。ニュアンス豊かで生彩に富んだ「四季」(5、8、10月は特に惹かれる)からモーツァルトの中でもロマン的な「幻想曲ニ短調」への移行も見事で、二人の意外な同質性を実感させられる。「トルコ行進曲付ソナタ」も表情こまやかな佳演。上原が音楽表現に奥行きを加えていることを如実に示す、傾聴すべき一枚だ。(柴田克彦)SACD

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