eぶらあぼ 2020.2月号
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59名古屋二期会 オペラ《月の影》 -源氏物語-古典文学の世界を雅なるステージへと転化した音絵巻文:柴純子3/7(土)13:00 18:00、3/8(日)11:30 16:30 名古屋市芸術創造センター問 名古屋二期会052-380-5416 http://nagoya-nikikai.jp 早春の3月、名古屋二期会と名古屋市芸術創造センターの連携公演で尾上和彦の《月の影》が上演される。尾上は、1942年生まれの奈良市在住の作曲家。劇音楽や舞台作品を数多く手がけ、なかでも《仏陀》、《藤戸》(『平家物語』による)、《法然・親鸞》など、日本の古典作品を題材にした作品に力を注いでいる。『源氏物語』を題材に書かれた《月の影》(台本:ツベタナ・クリステワ)は、2009年の舞台初演以来、『源氏物語』ゆかりの滋賀県石山寺や京都の春秋座等で上演を重ねてきた。原作者の紫式部を語り役とし、光源氏と彼をめぐる女性たちが登場。物語のなかで詠まれる和歌をアリアに、その現代語訳をレチタティーヴォに振り分け、日本語の語感を大切にした音楽が付された。 「月の影」とは、生まれながら陰にして光を放つ定めにあった光源氏その人で、彼の輝かしくも哀しい人生が描かれる。今回は、光源氏(本多信明/平尾憲嗣)、頭中将(鳴海卓/鈴木啓之)、紫上(加川文子/小坂井直美)、六条御息所(水谷映美/渡部純子)、紫式部(森本ふみ子/荻和子)ら、名古屋二期会、名古屋オペラ協会、名古屋演奏家ソサエティーの若手からベテランまで、ダブルキャストでの上演だ。演出は、舞台経験豊富な俳優で、日本舞踊・西川流名取の景山紀子。日本の伝統美を伝えるとともに、艶やかな女性の世界も切り開いてくれるだろう。名古屋を拠点に活躍する指揮の倉知竜也は、尾上の信頼も厚い。器楽は名古屋二期会管弦楽団のメンバー。春に相応しい華やかな舞台が楽しみだ。イーヴォ・ポゴレリッチ ピアノ・リサイタル沈黙の時期を経て、着々と歩を進める鬼才の“今”を聴く文:飯田有抄 2/16(日)19:00 サントリーホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960 http://www.kajimotomusic.com※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 ここ10年の間、イーヴォ・ポゴレリッチは2年と間を置かずに来日リサイタルを行ってきたが、昨年21年ぶりにアルバムを発表し、音楽界で注目を集めたことは記憶に新しい。ポゴレリッチは、22歳で受けたショパン国際ピアノコンクールで予選落ちし、審査員の一人であったアルゲリッチがその結果に激怒したという有名なエピソードをはじめとし、療養のために長らく沈黙を守るなど、その活動についてはセンセーショナルに語られることが多かったが、彼自身は極めて内省的に音楽芸術と向き合い、ひたむきに作曲家たちの所産と対峙してきた。そのアウトプットとなるポゴレリッチの演奏は、ときに「個性的」という言葉で受け止められるも、単なる「自我の強さ」とは程遠い意味での「個性」であることは、献身的なまでに作品世界に没頭する彼の、研ぎ澄まされた実演に接すれば、存分に感じられるはずだ。 今回のリサイタルはJ.S.バッハで幕を開ける。ト短調の響きが切実さとともに華やかさも持つイギリス組曲第3番だ。続くベートーヴェンのソナタは第11番。古典的な書法ながらみずみずしさに溢れたこの作品を、ポゴレリッチはどのように響かせてくれるだろうか。ショパンは2作品。名曲「舟歌」に続いては、ショパン自身が転調の妙に自信を示した前奏曲 op.45を取り上げる。締めくくりは、怪しい煌めきを放つラヴェルの「夜のガスパール」。ポゴレリッチのアプローチが気になって仕方がない作品ばかりのプログラムだ。Photo:Bernard Martinez ©Sony Music Entertainment森本ふみ子荻 和子鈴木啓之平尾憲嗣鳴海 卓本多信明

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