eぶらあぼ 2020.2月号
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54イェルク・ヴィトマン(クラリネット) with クァルテット・エクセルシオ第一線の作曲家兼スーパー・クラリネット奏者が日本の俊英たちと競演文:江藤光紀3/9(月)19:00 トッパンホール 問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com あらゆる楽器に精通し、オペラから室内楽まで、質・量ともに驚異のペースで創作活動を続ける現代作曲界のスーパースター、イェルク・ヴィトマンは、また優れたクラリネット奏者として、この楽器のために書かれた作品に名演を残してきた。 3回目となるトッパンホールでの演奏会は、全方位に発揮される輝かしい才能のありかを改めて明らかにする。「日本の優れたクァルテットと共演したい」という本人の要望を受け白羽の矢が立ったのは、充実期を迎えつつあるクァルテット・エクセルシオ。そこに二人の若き俊英(ヴィオラ:石田紗樹、チェロ:佐山裕樹)が加わり、前半はソロから六重奏までヴィトマン作品4曲が並ぶ。 代表作というべき弦楽四重奏曲集から、激しい躍動感によってとりわけ人気が高い第3番「狩」をメインに、終始撃ち込まれるパルス上でスリリングな掛け合いを繰り広げる弦楽六重奏曲「1分間に180拍」。しじまに流れる水底の歌から野性味あふれる踊りまでをあらゆる技巧を駆使して描き出す「3つの影の踊り」(自作自演)。声とヴァイオリンの古風な掛け合いが不協和音程の軋みへと変貌する「ヴァイオリン独奏のためのエチュード第2番」。名手たちの演奏を通じアイディアを鮮やかに音化する手さばきが楽しめるだろう。 後半はエクセルシオとの競演で、数多のクラリネットの名作を残したロマン派の大家ウェーバーの「クラリネット五重奏曲」。ヴィトマンの創作にはウルトラ・モダンな外観の陰に、伝統がしっかりと息づいている。歴史に向けられたヴィトマンの眼差しを、本作を通じて確認したい。アルカスSASEBOオリジナル室内オーケストラ チェンバー・ソロイスツ・佐世保名手たちが集った上質なアンサンブルの悦楽文:飯尾洋一2/23(日・祝)14:00 アルカスSASEBO(中)問 アルカスSASEBO 0956-42-1111 http://www.arkas.or.jp 長崎県佐世保市で意欲的な自主企画を展開するアルカスSASEBO。その活動の柱のひとつが、2016年に結成された「チェンバー・ソロイスツ・佐世保」である。音楽監督は新日本フィルのソロ・コンサートマスターをはじめ各地の楽団で活躍する豊嶋泰嗣。国内外で活躍するソリストや、日本各地のオーケストラのコンサートマスター、首席奏者たちをメンバーとする、佐世保発の室内オーケストラだ。 そのチェンバー・ソロイスツ・佐世保が、2月23日、アルカスSASEBO 中ホールで公演を行う。プログラムはバッハのブランデンブルク協奏曲第6番、チェンバロ協奏曲第4番、2つのヴァイオリンのための協奏曲、メンデルスゾーンのヴァイオリンと弦楽のための協奏曲、そしてモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。バッハの多彩な協奏曲に、若き日のメンデルスゾーンの協奏曲とモーツァルトのもっとも広く知られる傑作が組み合わされる。ソリストにはチェンバロの中野振一郎、ヴァイオリンの漆原啓子、南紫音を招く。ソリストたちはオーケストラのメンバーとしても演奏する。 日本を代表する精鋭ぞろいの室内オーケストラだけに、高水準の演奏がくりひろげられることはまちがいない。室内楽専用の中ホールで聴けるとあって、親密なアンサンブルを心ゆくまで楽しめるだろう。終演後にはロビーで交流会も開かれる。聴衆と出演者の距離の近さを実感できそうだ。クァルテット・エクセルシオイェルク・ヴィトマン ©Marco Borggreve左より:豊嶋泰嗣 ©中倉壮志朗/漆原啓子 ©Eiji Shinohara/南 紫音 ©Shuichi Tsunoda/中野振一郎 ©中倉壮志朗

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