eぶらあぼ 2020.2月号
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50明日を担う音楽家による特別演奏会新鋭歌手たちが勢ぞろいする華麗なるステージ文:岸 純信(オペラ研究家)3/5(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 チケットスペース03-3234-9999 https://www.ints.co.jp 「オペラ界の新星たち」を身近に感じたければ、3月5日の東京・初台に足を向けてみては? 文化庁の新進芸術家海外研修を終えた若手歌手による「明日を担う音楽家による特別演奏会」で、今年は7名が声を競うとのこと。まずはプログラミングにご注目を。オフェリの悲痛な〈狂乱の場〉とワーグナーの耽美的な〈イゾルデの愛の死〉、ロルツィングの怒りのアリアにヴェルディの無常観漂う〈ロドリーゴの死〉と、対照的な曲調で上手く配置されている。 それでは女声から紹介しよう。超高音をきらめかせ、抒情性も際立つ鈴木玲奈、柔らかい響きでメロディを官能的に膨らませる竹下裕美のソプラノ2人に、ロッシーニやフランスもので声の技を爽やかに披露する金澤桃子、きりっとした面差しと濃く豊かな歌いぶりが魅力的な藤田彩歌と、将来有望なメゾソプラノ2人が出演する。 一方の男声陣も気鋭の逸材ばかり。得意のイタリア・オペラで声音をしなやかに操るテノール山本耕平、ベルリンに学び、ドイツ語のオペラに若々しい声で取り組むバリトン深瀬廉、ヒロイックな歌いぶりと華やかな個性で客席をすぐさま惹きつけるバリトン村松恒矢と最前線をひた走る3名がステージに集う。そして、指揮台に立つのは、これまた若手の代表格、角田鋼亮。長身から繰り出すダイナミックな棒捌きで、オペラに強い東京フィルハーモニー交響楽団とともに、フレッシュな美声を力強く支えてくれるだろう。深瀬 廉フィリップ・トゥッツァー バッハ 無伴奏ファゴット・リサイタル第一線オケのソリストを務める名手によるバッハ無伴奏文:寺西 肇2/12(水)19:00 JTアートホール アフィニス※公演日が、当初発表されていた2/14から2/12に変更になりました。問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831http://www.pacific-concert.co.jp たった1人で対峙する、バッハ父子の無伴奏作品。ファゴットという楽器の底力を、存分に知らしめることだろう。 ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の首席奏者を務め、ソリストとしても国際的に活躍しているイタリア出身の名手、フィリップ・トゥッツァー。ウィーン国立音楽大学やハノーファー音楽演劇大学に学び、2008年には“超難関”で知られるARDミュンヘン国際音楽コンクールで第2位入賞を果たした。 ソリストとしては、ベルリン・フィルハーモニーやウィーン・ムジークフェラインなどの檜舞台へも登場。ベルリン・フィルやミュンヘン・フィルなど、第一線楽団にもゲスト奏者として客演を重ねている。モーツァルテウム管弦楽団の同僚らと結成した「ファゴット・トリオ・ザルツブルク」のメンバーとしても、精力的に活動。後進の指導にも力を注いでいる。 今回のステージは、大バッハの不朽の傑作「無伴奏チェロ組曲」から第1番と第4番が軸に。原曲にあっては、旋律と通奏低音の二役を演じることが求められ、時に重音の使用も。単音で奏するファゴットでは、いかにポリフォニーを“暗示”するのか。浮上する新たな課題へ立ち向かう、名手の創意に要注目だ。 ここへ、大バッハが無伴奏フルートのために書いた「パルティータ イ短調」(BWV1013)と、同じく次男カール・フィリップ・エマヌエルによる「ソナタ イ短調」(Wq132)を披露する。共にニ短調に移調され、温かく滋味あふれる低音で奏される佳品は、全く新たな印象を聴き手へもたらすはず。村松恒矢角田鋼亮 ©Hikaru Hoshi山本耕平 ©Kei Uesugi竹下裕美金澤桃子藤田彩歌鈴木玲奈

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