eぶらあぼ 2020.2月号
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37ニコライ・アレクセーエフ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団本場の名匠が紡ぐ真正ロシア音楽の醍醐味文:柴田克彦第616回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉2/15(土)14:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp これは真正ロシアの響きを期待できるコンサートだ。この2月、ニコライ・アレクセーエフが新日本フィルの定期演奏会に登場する。1982年カラヤン指揮者コンクール優勝等の受賞歴をもつ彼は、2000年からサンクトペテルブルグ・フィルの指揮者(副芸術監督)を務める一方、エストニア国立響の音楽監督、コンセルトヘボウ管等の著名楽団への客演でも実績をあげている。また18年にはサンクトペテルブルグ・フィルの来日公演を急遽指揮して好評を博し、今年4月の同楽団来日公演では芸術監督テミルカーノフと指揮台を分け合うことになっている。 新日本フィルには2002年、08年に客演し、ショスタコーヴィチの交響曲第7番、第11番等で迫力満点の快演を展開。久々登場の今回は、円熟味を加えた今の彼と、上岡敏之のもとで精緻さを増している同楽団とのコラボで、いかなる音楽が生み出されるのか? 大いに注目される。演目はまずチャイコフスキーの勇壮な名曲「スラヴ行進曲」。ここは正攻法の進軍を期待したい。おつぎはソロ・コンサートマスターの崔文洙がソロを弾くショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。実力者の崔が本場の名匠の指揮で奏でる難曲にも熱視線が注がれる。そして同じく交響曲第6番。順に加速する3楽章構成の本作は、誰もが聴きやすく、特に第3楽章はエキサイト必至だ。生演奏の少ない曲ゆえ、同作曲家に実績あるコンビで体験できるこの機会は逃せない。 アレクセーエフは、古き良きロシアのテイストを爽やかに聴かせるのが魅力。ここは本流のサウンドと音楽にたっぷりと浸りたい。藤原歌劇団公演 ヴェルディ《リゴレット》(新制作)佐藤美枝子のジルダ役をはじめ話題満載の舞台 文:室田尚子2/1(土)、2/2(日)各日14:00 東京文化会館 2/8(土)14:00 愛知県芸術劇場問 日本オペラ振興会チケットセンター03-6721-0874https://www.jof.or.jp/performance/2002_rigoletto/ 近年、歌手陣の充実ぶりが話題となっている藤原歌劇団。2月に行われる新制作による《リゴレット》では、ジルダを佐藤美枝子が歌うという。佐藤といえば、押しも押されもせぬ藤原歌劇団のプリマドンナであると同時に、日本を代表するソプラノ・リリコ・レッジェーロのひとり。常に自分を厳しくコントロールし、舞台では最上のパフォーマンスを提供する彼女の姿勢からは、“歌い手”としての自負と責任感が伝わってくる。そんな佐藤のジルダだ。アリア〈慕わしい人の名は〉が楽しみなのはもちろんのこと、恋人と父親との間で板挟みになる女性像をどう演じるのかも含めて、世界にも通用するような“超一流のジルダ”が観られることを期待したい。 佐藤ジルダ組のリゴレットは、奥行きのある歌声と役に対する真摯な姿勢が素晴らしい須藤慎吾。そしてマントヴァ公爵は、日本人離れした声で大人気のスター・テノール笛田博昭。他にもスパラフチーレに伊藤貴之、マッダレーナに鳥木弥生といずれも本格派揃い。もちろん別組も、ベルカントの名手でありながら近年その幅を広げて躍進してきた光岡暁恵による充実のジルダ、ヴェルディ・バリトンとして定評のある上江隼人など、聴き逃せない歌手の名前が並んでいる。これはどちらの組も聴きたくなる人が多いのではないか。 指揮は、近年オペラ指揮者として心境著しい柴田真郁。演出は藤原歌劇団ではおなじみの松本重孝。“イタリア・オペラの藤原”の名にふさわしい《リゴレット》の上演が待ち遠しい。崔 文洙ニコライ・アレクセーエフ柴田真郁須藤慎吾佐藤美枝子

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