144CDCDCDCDアドルフに告ぐⅡ/上野耕平チェコ・フィルハーモニー弦楽四重奏団&岩井のぞみスペインの歌/新井伴典フランス・ピアノデュオ作品集 ―花房晴美ライブ・シリーズⅤ―逢坂裕:ソプラノサクソフォンとピアノのためのソナタ エクスタシス/フェルナンド・デュクリュック:ソナタ 嬰ハ調/トマジ:バラード/マルタン:バラード/藤倉大:ブエノ ウエノ上野耕平(サクソフォン)山中惇史(ピアノ)林英哲(和太鼓)ヤナーチェク(イール編):霧の中で/ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」、ピアノ五重奏曲 op.81チェコ・フィルハーモニー弦楽四重奏団岩井のぞみ(ピアノ)アルベニス(新井伴典編):入り江のざわめき/モレノ・トローバ:ラ・マンチャの歌/ロドリーゴ:小麦畑で/タレガ:4つの小品/トゥリーナ:セビリア幻想曲、タレガ讃歌/プジョール:セギディーリャ/新井伴典編:5つのカタロニア民謡/フェレール:父の温かみ新井伴典(ギター)ドビュッシー:小組曲、牧神の午後への前奏曲(2台ピアノ版)、白と黒で、「夜想曲」(ラヴェル編/2台ピアノ版)より/フォーレ:ドリー/デュティユー:「響の形」より/プティ:悪魔のデュエット花房晴美&花房真美(ピアノデュオ)日本コロムビアCOCQ-85478 ¥3000+税収録:2018年9月、東京文化会館(小)(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7914 ¥2500+税コジマ録音ALCD-7247 ¥2800+税収録:2018年11月、東京文化会館(小)(ライヴ)日本アコースティックレコーズNARD-5071 ¥2800+税いかにも挑発的な『アドルフに告ぐ』なるタイトルのアルバムをリリースしてから5年、ここに上野耕平は同第2弾を放つ。上野のために書かれ世界初録音となる逢坂裕と藤倉大による2曲、そしてすでにサクソフォン奏者のレパートリーとして広く膾炙したデュクリュック、トマジ、マルタンの3曲を収録。捨て曲なし、全て必聴曲であり超絶的な演奏と断言しうるが、中では逢坂作品の技巧的でラプソディックな曲想をおよそムラのない技巧と美音で吹き切る様に、そしてマルタン作品における息の長い楽想を大きなフレーズ感覚で構築する胆力に驚嘆。藤倉作品では林英哲との共演! (藤原 聡)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーによるクァルテットは国際的に活動を展開し、幅広いレパートリーを持つが、とりわけチェコの音楽の演奏において、その伝統と魅力を素晴らしい形で伝えている。今回のディスクは東京文化会館でのリサイタルのライヴ録音。ヤナーチェクとドヴォルザークの作品を収めているが、そのどれもが香り立つような豊かな響きで奏され、チェコという国の空気を感じさせてくれる。またピアノの岩井のぞみが加わっての「ピアノ五重奏曲」では、透明感のある岩井の音色がクァルテットの音色と美しいコントラストを作り出し、立体感のある音楽を構築している。(長井進之介)ギターの師でもあった亡き父に捧げられたアルバムは、父が愛奏し、新井伴典が教えを受けたスペインの音楽を集めた。アルペジオが華やかに散り、旋律は軽やかに踊る。情熱のステップが、郷愁のため息へと移り変わる。技巧を技巧と感じさせず、奏者と楽器と作品が三位一体となって、力まない自然体の音楽が流れていく。親しい人が話しかけてくるかのように、この楽しいおしゃべりはとどまるところを知らない。ギターの故郷の音楽は新井にとってもはや血肉化された身体の一部なのだろう。最後に収録されたフェレールはしみじみとしたメロディーが、失われた人の温もりをひそやかに伝えている。(江藤光紀)花房晴美の「ライブ・シリーズ」第5弾は、実妹・花房真美とのデュオによる「フランス・ピアノデュオ作品集」。2018年11月15日に東京文化会館小ホールで開かれたコンサートのライヴ録音である。冒頭はドビュッシーの名連弾曲「小組曲」のチャーミングな演奏で開始。2台ピアノによる「白と黒で」やラヴェル編曲の「夜想曲」では、当日の会場にオーケストラのような色彩感あふれる響きがいっぱいに広がっていたことを伝える。デュティユーの「響の形」は2台の立体的な音像が圧巻。プティの「悪魔のデュエット」は耳と脳内を揺さぶられるような楽しい演奏だ。 (飯田有抄)
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