eぶらあぼ 2020.1月号
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79エリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ) リサイタル美貌のメゾソプラノ、ついに日本初のリサイタル公演が実現文:岸 純信(オペラ研究家)5/27(水)18:30 愛知県芸術劇場 コンサートホール問 中京テレビ事業チケットセンター052-320-9933 http://www.e-get.tv5/28 (木)19:00 すみだトリフォニーホール (追加公演) ※5/23は完売問 テイト・チケットセンター03-6379-3144 http://www.tate.jp 透明感と深みが融け合う声音と、かのグレース・ケリーを想わせる「クール・ビューティ」で世の頂点に立つ大メゾソプラノ、エリーナ・ガランチャ。北国ラトヴィアの出身で世界の五大歌劇場を制覇、バロックからベルカントものまで声のテクニックを鋭く追求する一方で、カルメンやデリラといったフランス・オペラの美悪魔も官能的に歌い上げ、《ばらの騎士》のオクタヴィアンのような男装の麗人役でも人気が高いという、オペラ界の「大スター中の大スター」である。 そのガランチャがこの5月に再来日を果たし、ピアノ伴奏で単独のリサイタルを行うとのこと。いまやキャリアの絶頂期にある彼女を、声楽ファンなら聴き逃すわけにはいかないだろう。大歌手の芸術性に触れる好機として、ぜひ注目してもらいたい。 ちなみに、冷たい美貌を誇るとはいえ、日ごろのガランチャはとてもフレンドリーのよう。何しろ、ソプラノの中村恵理が共演した折、舞台袖でいきなり、ガランチャの側から中村に発声法のちょっとした相談があり、後輩世代の彼女を仰天させたというのだから。でも、そうした率直さも、彼女のキャリアを支える一助なのだろう。5月の曲目は、《カルメン》の〈ハバネラ〉しかまだ発表されていないが、大悲劇から軽妙なコメディまでこなし、サルスエラの名アリアも好んで歌うガランチャだけに、幅広い選曲が期待できそうである。歌声と所作が放つ「本物の美」を、目でも耳でも堪能してもらいたい。©Paul Schirnhofer/DG水戸室内管弦楽団 第105回定期演奏会日本第一線の音楽家からなる楽団の記念碑的演奏会文:片桐卓也2/1(土)、2/2(日)各日15:00 水戸芸術館コンサートホール問 水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000 https://www.arttowermito.or.jp 世界的に活躍する日本人演奏家から選りすぐりのメンバーを集め、室内管弦楽団を作ったら、どんな響きとなるだろう? 水戸芸術館初代館長であり、戦後日本を代表する音楽評論家でもあった吉田秀和のそんな想いを実現したのが、1990年に結成された水戸室内管弦楽団である。その特別な響きは水戸市のみならず、日本各地の聴衆を唸らせてきた。2020年の第105回定期演奏会は、創立30周年を祝う特別公演となり、これまで演奏してきたレパートリーから思い出のある作品を取り上げる。 まずチャイコフスキーの「弦楽セレナード」第1楽章からスタート。そしてヴァイオリン独奏に豊嶋泰嗣、オーボエ独奏にフィリップ・トーンドゥルを迎えて、J.S.バッハの「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 BWV1060R」が演奏される。続くショスタコーヴィチ(バルシャイ編)による「アイネ・クライネ・シンフォニー op.49a」は吉田と同楽団に捧げられたもの(原曲はショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第1番で、バルシャイ指揮により1995年に初演された)。さらに、バルトークの「ルーマニア民俗舞曲集」、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」が取り上げられる。 これまで数々の名演を残してきた水戸室内管だが、結成30年を経て、その音楽的な密度はさらに深まっていくだろう。この第105回定期演奏会のプログラムはバロックから現代までと幅広く、傑出したアンサンブルの多様な音楽性を示すものになりそうだ。フィリップ・トーンドゥル豊嶋泰嗣 ©Michiharu Okubo

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