78©武藤 章2022年デビュー20周年に向けて Vol.1 上原彩子 ピアノ・リサイタル3/25(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp上原彩子(ピアノ)2022年のデビュー20周年に向けて新たな一歩取材・文:千葉 望Interview 10歳の時からロシア人の名教師ヴェラ・ゴルノスタエヴァ女史の教えを受け、2002年のチャイコフスキー国際コンクールで女性として、またアジア人として初めての優勝を飾って以来、上原彩子といえばチャイコフスキーやラフマニノフなどのロシア音楽を得意とするピアニストというイメージがある。だが最近はフォルテピアノに興味を持ち、自宅にも楽器店から借りた1台を置いて熱心に練習に取り組んできた。「常に新しいことに挑戦することが自分にとって大事」と語る上原の、近年の大きな取り組みである。 19年1月には東京文化会館小ホールで古楽の有田正広(フルート)と共演し、モーツァルトやブラームスの作品を演奏している。この時は1800年代のレプリカのフォルテピアノとモダンピアノを弾き分け、前半のモーツァルトをフォルテピアノで演奏した。 「最初は古楽器の人たちが音楽をどういう風に解釈しているのか、楽譜をどのように読んでいるのだろうかということに興味を持ったんです。有田先生のところにあるいろいろな楽器を弾かせていただいているうちに、フォルテピアノがとても新鮮でおもしろいと感じるようになりました。フォルテピアノはしっかり力を抜かないと良い音が出ないんです。そんなタッチを勉強していくうちに、モダンピアノでモーツァルトを弾くときにも軽い音が出せるようになってきました」 本来の持ち味であるスケールの大きさ、力強さに加え、以前より音の幅が広がったことで、モーツァルトも自信を持って演奏できるようになった。19年8月に飯森範親&日本センチュリー交響楽団と共演したモーツァルトのピアノ協奏曲第19番はフォルテピアノで演奏した。指揮の飯森によれば、音量の小さなフォルテピアノでの演奏のため、オーケストラも上原も互いによく聴き合って、溶け合うような曲作りができたという。 20年3月、東京オペラシティ コンサートホールでのリサイタルは、得意のチャイコフスキーに、新境地を開きつつあるモーツァルトの組み合わせである。演奏するのはモダンピアノだが、フォルテピアノの演奏から学んだものを存分に発揮する機会となるだろう。 「幼い頃から育んできたものに最近自分で開拓してきたものとが混ざり合った、自分なりの音楽の宇宙を聴いていただけると思います」 ゴルノスタエヴァに学び、長年慈しむように弾き続けてきたチャイコフスキーとの組み合わせ。どんな相乗効果が生まれるのか、大いに楽しみである。Hakuju サロン・コンサート vol.5 大槻孝志(テノール) & 小林由佳(メゾソプラノ)~五感で愉しむ音のBistro♪~『コスモポリタンな音楽晩餐会』音の職人たちによる音楽のフルコース文:東端哲也 欧州で王朝文化華やかなりし時代に、王侯貴族が開いていたサロンのゴージャスな親密感がコンセプトのコンサート・シリーズ第5弾。登場するのは同ホールでIL DEVUリサイタルや「音楽劇紀行」第五夜に出演し、圧倒的な美声を聴かせて会場を魅了したテノールの大槻孝志と、2017年東京二期会《ばらの騎士》公演での瑞々しい歌唱と演技も記憶に新しいメゾソプラノの小林由佳。大槻はタンゴの名曲ガルデル〈ポル・ウナ・カベサ〉、小林はチャイコフスキー〈ただ憧れを知る者だけ2/14(金)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp左より:小林由佳、大槻孝志 ©Aiko Suzukiが〉を用意するなど、オペラ・アリアのリサイタルとはひと味違う趣向に期待が持てる。共演には二人が厚い信頼を寄せる実力派ピアニストの松本和将、さらにスペシャル・ゲストとしてヴァイオリニストの上里はな子を迎えて、それぞれ「リゴレット・パラフレーズ」や「タイスの瞑想曲」などソロ演奏も披露するフルコースを予定。今回もとっておきの音楽の晩餐会になりそうだ。
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