eぶらあぼ 2020.1月号
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76青柳いづみこ(ピアノ) 演奏活動40周年記念企画独自の眼差しでフランス音楽を見つめるピアニストが紡ぐ物語文:飯田有抄1/11(土)【昼の部】ソロ:奏でられる物語 14:00 【夜の部】連弾:6人組誕生! 19:00 浜離宮朝日ホール問 東京コンサーツ03-3200-9755 http://www.tokyo-concerts.co.jp 1980年1月11日、フランス留学から帰国して間もない青柳いづみこがデビュー・リサイタルを行なった。それから40年後の同日、「青柳いづみこ 演奏活動40周年記念企画」と銘打ったコンサートが、昼と夜の二部構成で開かれる。青柳はフランス近代芸術の香りを今に伝えるピアニストであると同時に、ドビュッシー研究の第一人者であり、エッセイや人物評伝などを多数出版する文筆家としても活躍を続ける。このコンサートは青柳の演奏家としての節目をマークするものに違いはないが、フランス音楽史をナラティブに描き出そうとする今回のプログラミングには、文筆家としての構築力とファンタジーとを滲ませる。 「昼の部」は独奏。20世紀のサティ、ラヴェル、イベールの作品群の間に、18世紀のクープランとラモーの響きを織り交ぜる。“物語”をテーマとして、女の一生を描く「フォリー・フランセーズ」(クープラン)、「コ・クオの少年時代」(サティ)、「物語」(イベール)などを取り上げる。なお、エキスパートでありながらもドビュッシー作品を入れていないところに、青柳のウィットを感じる。「夜の部」は、近年4手連弾で共演を重ねてきた高橋悠治をゲストに迎え、100年前の1920年に命名されたフランスの「6人組」の連弾作品に光を当てる。プーランクの「連弾ソナタ」やオーリックの「アデュー・ニューヨーク」など軽妙洒脱な作品のほか、高橋のピアノと青柳の朗読でミヨーの「ボヴァリー夫人のアルバム」も披露される。波多野聖子 ニューイヤーコンサート2020 with ポール・ポッツ波多野とポッツの本格的な歌の博覧会で新春からパワーをもらえる文:香原斗志 「歌を通して架け橋を創る」がNY在住のソプラノ、波多野聖子のモットーだという。NYシティシンフォニーの専属ソリストとして、世界25ヵ国で歌い、27ヵ国語の歌のレパートリーを持つ波多野だから、言葉に実が伴っている。1月7日には日本語の歌のアルバム『桜YAMATOに』が発売される。そして、同日行われるコンサートで披露される曲は《ルサルカ》の〈月に寄せる歌〉をはじめ、パーセルの〈ヴァイオルをかき鳴らせ〉、プーランクの歌曲〈愛の小径〉、アリャビエフの歌曲〈夜鳴き鶯〉…。チェコ語、英語、フランス語、ロシア語と、歌の万国博覧会の様相で、まさに「架け橋」である。 いずれも歌唱が本格的なのにはわけがある。「オペラもポップスも歌いながら、ジャンルを超える宇宙の理に適った発声があるはずだと信じて探求してきました」と語る波多野は、見つけたという。「それはイタリアのベルカント唱法でした。そして、やっとゴールが見えてきました。コンサートで披露する声をご期待ください」。 携帯電話の販売員から一躍スターになった、あのポール・ポッツとの共演も大きな話題だ。一般の人にオペラなどの楽しさを伝える「架け橋」になった点でも波多野と通じるポッツ。「真心で歌われる波多野さんとのデュエットのほか、オペラアリアから映画音楽、ミュージカルナンバーまでお聴かせします」と語る。十八番の〈誰も寝てはならぬ〉も、もちろん含まれる。 都内主要オーケストラの首席級が集結したアペルト弦楽四重奏団との共演も注目で、彼らのカルテットも大きな聴きどころとなる贅沢なコンサートだ。1/7(火)19:00 武蔵野市民文化会館問 Seiko Lee Project N.P.O. 03-6455-3810ポール・ポッツ ©The third mind studio波多野聖子 ©Seiko Lee Project

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