59東京・春・音楽祭2020 イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.2リッカルド・ムーティ指揮《マクベス》(演奏会形式/字幕付)巨匠が伝授した劇的オペラの真髄を聴く文:柴田克彦3/13(金)18:30、3/15(日)15:00 東京文化会館問 東京・春・音楽祭チケットサービス03-6743-1398 https://www.tokyo-harusai.com 2020年の東京・春・音楽祭は、リッカルド・ムーティ指揮のヴェルディ《マクベス》(演奏会形式)で華麗に開幕する。これは、ムーティが若い音楽家にオペラを創り上げるまでの極意を伝える「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」の一環。同アカデミーでは、10日間にわたってレクチャーの他、作品解説や受講生による演奏会も行われる。 《リゴレット》が題材だった前回、アカデミーを一部見学したが、極めて示唆に富む内容だった。本公演でその指導の成果が直接的に反映されるのは、通しでレクチャーに参加している東京春祭特別オーケストラの演奏。国内外で活躍する日本の若手プロ奏者が集う同楽団が、ムーティの薫陶を受けていかなる演奏を聴かせるかが、まずは注目点となる。そして前回と大きく異なるのが、抜粋上演だった《リゴレット》と違って《マクベス》全曲が演奏されること。すなわち現代最高のイタリア・オペラ&ヴェルディ指揮者が描く名作の全容と真髄を存分に堪能することができる。ソリストもパワーアップ。ムーティ指揮の《オテロ》等で主役級を演じているバリトン、ルカ・ミケレッティ(マクベス)、現代屈指のバス、リッカルド・ザネッラート(バンコ)、引く手数多のテノール、フランチェスコ・メーリ(マクダフ)に、17年デビュー後の進境著しいソプラノ、アナスタシア・バルトリ(マクベス夫人)を加えた強力な布陣は、これだけでも聴く価値がある。 ドラマティックで幻想的な傑作《マクベス》は、主要歌手が等しく活躍する上に、情景を巧みに表現する管弦楽が重要な作品でもある。それゆえ演奏会形式での上演は意味深いし、巨匠が指揮台上で魅せる全曲演奏への期待もよりいっそう高まる。左より:リッカルド・ムーティ ©Todd Rosenberg/ルカ・ミケレッティ/リッカルド・ザネッラート/アナスタシア・バルトリ/フランチェスコ・メーリヘルムート・ライヒェル・シルヴァ(指揮) 東京交響楽団スペインにまつわる多様な音楽を集めた意欲的なプログラム文:飯尾洋一川崎定期演奏会 第74回2/1(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp 東京交響楽団の2月川崎定期はスペイン音楽プログラム。2017年の共演で評判を呼んだヘルムート・ライヒェル・シルヴァが指揮を担う。ライヒェル・シルヴァはチリ生まれのドイツ系で、音楽監督ジョナサン・ノットが太鼓判を押す逸材。トランペットにエリック・ミヤシロ、ギターにラファエル・アギーレとソリスト陣も強力だ。 プログラムがおもしろい。リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」、天野正道の「ウナ・オベルテューラ・エスパニョーラ・ファルサ『エル・ハルディン・デ・ロス・レクエルドス』」(管弦楽版初演)といった非スペイン人によるスペイン趣味の音楽と、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」、ファリャのバレエ「三角帽子」第2組曲という純然たるスペイン音楽が組み合わされている。外から見たスペイン、中から見たスペインとでもいうべきか。 天野作品の原曲はJR東日本東北吹奏楽団委嘱作。その管弦楽版の初演となる。「ウナ・オベルテューラ……」というとても長いスペイン語の曲名をあえて訳せば、「偽スペイン序曲『思い出の庭』」といったところだろうか。エリック・ミヤシロによるトランペットの抜けるようなハイトーンが聴きもの。 アランフェス協奏曲で独奏を務めるアギーレは、フランシスコ・タレガ国際ギターコンクールをはじめ数々のコンクールで受賞歴を誇る気鋭。マドリードを拠点とするアギーレにとって、この曲は十八番だろう。ラファエル・アギーレ ©European Music Foundation(Liz lsles)エリック・ミヤシロヘルムート・ライヒェル・シルヴァ ©Patricio Martinez
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