56高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団戦後の楽壇に大きな役割を果たした先人へのオマージュ文:江藤光紀第330回 定期演奏会 1/18(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 2019年は戦後の日本のオーケストラ界を牽引した指揮者・渡邉曉雄の生誕100年。日本フィル創設に尽力するとともに、東京藝大でも教鞭をとった渡邉は、戦後音楽の発展を導いた立役者の一人。東京シティ・フィルと常任指揮者・高関健との1月の定期演奏会は、その先達に捧げられる。 カラヤン指揮者コンクールに優勝し海外武者修行に出た高関は、1985年、渡邉の推薦で帰国デビューを飾った。96年には渡邉曉雄音楽基金音楽賞を受賞してもいる。また東京シティ・フィルと言えば、首席客演指揮者の藤岡幸夫も渡邉の最後の弟子として知られる。その意味でもこのオケは、渡邉のDNAを色濃く受け継いでいると言えよう。 さて、演奏会ではメンターゆかりのプログラムを並べた。まず渡邉の肝いりで始まった邦人作曲家への新作委嘱シリーズ「日本フィル・シリーズ」で演奏された曲目から2曲。渡邉の意気を感じた若手たちが力作を続々と書き下ろし、名曲・重要作が生まれていった。戦後世代の作曲家にとって、このシリーズはどれほど大きな刺激になったか知れない。その中から記念すべき第一作、矢代秋雄「交響曲」(1958)と第五作、柴田南雄「シンフォニア」(1960)。 後半はシベリウスの交響曲第2番。フィンランド人を母に持つ渡邉にとって、シベリウスは自らのルーツにある作曲家。その音楽を終生愛し、レパートリーとした。私たちは渡邉を通じてシベリウスを深く知り、理解したといっても過言ではない。 高水準にある日本のクラシック音楽も、先人たちのたゆまぬ努力の上に成り立っている。その功績に思いを馳せよう。高関 健 ©金子 力紀尾井ホール開館25周年記念演奏会トレヴァー・ピノックのモーツァルト「レクイエム」モダンオケでも活躍する古楽界の巨匠が一期一会の名演を文:小室敬幸2/8(土)、2/9(日)各日14:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp 新しい世代の古楽系指揮者も話題となるなか、古楽ムーブメントを牽引してきた音楽家が次々とこの世を去る昨今だからこそ、御年73歳トレヴァー・ピノックの存在感はもっと意識されてよいだろう。手兵イングリッシュ・コンサートとともに録音されたバッハやモーツァルトは、今後もファーストチョイスになりうる名演ばかり。今世紀に入ってからはベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管、フランス国立管といった世界各地のモダンオケでも、スタイリッシュでありながら実に濃密な音楽を聴かせてくれている。 そんなピノックがたびたび共演してきた紀尾井ホール室内管弦楽団(旧称:紀尾井シンフォニエッタ東京)の創立25周年記念公演にあわせ、4年ぶりに帰ってくる。曲目は2004年と12年の共演でも絶賛を博した、得意のモーツァルトだ。ベルリン・フィルに客演した際にも取り上げた得意曲である交響曲第40番ト短調に、天上的な世界を感じさせる「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、そして締めはモーツァルトの絶筆である「レクイエム」と晩年の傑作ばかりが揃う。演奏者もアルトを歌うカウンターテナーの青木洋也をはじめ、望月万里亜、中嶋克彦、山本悠尋といった古楽を得意とする独唱陣、東京藝大卒の若手を中心とした精鋭ばかりの合唱団と、役者の揃った顔ぶれになっているため期待してよさそうだ。現在、英国王立音楽院の室内オーケストラの首席客演指揮者として若人とともに日々演奏をおこなうピノックが、日本の若き音楽家たちと一期一会の火花を散らすのだから!左より:トレヴァー・ピノック ©Peer Lindgreen/望月万里亜/青木洋也/中嶋克彦/山本悠尋
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