eぶらあぼ 2020.1月号
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160CDCDCDエルガー:チェロ協奏曲/宮田大&ダウスゴー&BBCスコティッシュ響イベール:フルート協奏曲 他/工藤重典&ロフェ&兵庫芸術文化センター管ドビュッシー&ラヴェル:弦楽四重奏曲/ひばり弦楽四重奏団松本和将 ライブシリーズ8 ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 op.5 他エルガー:チェロ協奏曲/ヴォーン=ウィリアムズ(マシューズ編):暗愁のパストラル宮田大(チェロ)トーマス・ダウスゴー(指揮)BBCスコティッシュ交響楽団イベール:フルート協奏曲/ドビュッシー:交響詩「海」/デュカス:交響詩「魔法使いの弟子」工藤重典(フルート)パスカル・ロフェ(指揮)兵庫芸術文化センター管弦楽団ドビュッシー:弦楽四重奏曲/ラヴェル:弦楽四重奏曲ひばり弦楽四重奏団【漆原啓子(第1ヴァイオリン) 漆原朝子(第2ヴァイオリン) 大島亮(ヴィオラ) 辻本玲(チェロ)】ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番/シューマン:幻想曲 ハ長調松本和将(ピアノ)日本コロムビアCOCQ-85473 ¥3000+税収録:2019年4月、兵庫県立芸術文化センター(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-4070 ¥3000+税日本アコースティックレコーズNARD-5070 ¥2800+税収録:2018年11月、東京文化会館(小)(ライヴ)タクトミュージックTACD-157 ¥3000+税日本が世界に誇る大器・宮田大によるエルガーの「チェロ協奏曲」。名曲に新たな名盤の登場だ。大柄の楽器の物理的制約を感じさせない高度なテクニックを用いて、作品像をスケール豊かに描き出す。滔々とした波動を生む第1楽章。第2楽章に入ると、素早い動きの中から獲物をあやまたず仕留める銛のように切っ先の鋭いハーモニクスが次々と繰り出される。深々とした第3楽章を経て、終楽章では冒頭主題を堂々とアピール。しかも全ての所作がスマートだ。併録の「暗愁のパストラル」はヴォーン=ウィリアムズの遺稿を、ディヴィッド・マシューズが郷愁を湛えた渋い協奏的作品に仕上げている。(江藤光紀)パスカル・ロフェ、兵庫芸術文化センター管客演時のオール・フレンチ・プログラム・ライヴ。現代作品も得意とするこの指揮者らしく細部まで明晰な演奏を聴かせて秀逸だが、例えば「海」では対立する各声部のグラデーションの付け方の巧みさによって構造が明快になっているし、イベールではリズムの扱いが冴えている(洒落たレッジェーロに微塵の衰えも見せぬ工藤重典のソロの良さは申すまでもない)。「魔法使いの弟子」ではオーソドックスな演奏のようでいて、ここでも声部間バランスや独自のテンポ設定などもあって指揮者の意思の貫徹と出された結果は明確。オケの技量も申し分なし。(藤原 聡)日本を代表する弦楽器奏者が集まり結成された「ひばり弦楽四重奏団」。それぞれが一流のソリストである彼らのアンサンブルは、エネルギーに溢れながら、互いへの尊敬に溢れた音楽を展開する。音色の美しさ、色彩の豊かさが求められるドビュッシーとラヴェルをファーストアルバムに選曲するあたりからも、音色に対する鋭敏な感覚への絶対的な自信を窺わせる。調和と競奏のバランスが絶妙であり、非常に立体的な音楽を構築している。漆原姉妹の輝かしい音色と大島、辻本の包容力のある音色はまだまだ様々な音色の可能性を秘めており、今後の主軸となるベートーヴェンにも期待が膨らむ。(長井進之介)松本和将が、毎回深い探求のうえで臨むリサイタルシリーズのライヴ録音。ブラームスからは若き日のピアノ・ソナタ第3番。思い切りの良い打鍵で、重く厚みのあるハーモニーが気持ち良く鳴らされ、またそれにより穏やかなパートの音が生きる。作曲家の気迫と豊かな感情が見事に浮かび上がる。続くシューマン「幻想曲」は、はっきりとしたタッチを保ちつつも音が柔らかさをまとい、入り組んだ音楽が示す心情を届けてくれる。ブックレットの解説は松本自身によるもので、作品にどう近づいていったのかを伝えている。音楽が語ることをより受け取る手掛かりとなって興味深い。(高坂はる香)CD

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